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周防からの精神的攻撃からなんとか立ち直った照は2人にまともな自己紹介をしていなかったことに今更ながら気づいた。
赤の王についてなら自分の主から「知っておいた方がいい」と教えられていたし、十束からここまでの道中で聞くだけ聞いてはいたのだが、自分だけ知っているというのはやはりフェアじゃない気がした。

「あの、私は天海照18歳K大の1年です。」
「ああ、そういえば自己紹介まだやったな。俺は草薙出雲。一応このバーのマスターやっとります。」
「……周防尊。」
「それだけかいな!」
「照って俺より年上だったんだ。」
「あ、ハイそうですね。」
「じゃあ俺のことも名前でいいよ?」
「え……、多々良君?」
「呼び捨てでいいのに。」

そう言って十束は苦笑した。

「いや、初対面の人をいきなり呼び捨てはどうかと思って……。」
「なんや天海ちゃんは真面目やなあ。」

草薙が笑って言った。それだけでなんだか胸の鼓動がうるさくなった。

「照ー?」
「たっ多々良君!?」
「草薙さんに見惚れてた?」

ニヤニヤしながら小声で囁いてきた十束。

「っうるさいよ多々良君。」

ムッと少しだけ赤らんだ顔で言っても、十束はケラケラと笑うだけだった。

「どしたん?2人とも。」
「いや照が「何でもないです!気にしないでください!」
「……そうか?」

いい加減にしろと照は思った。からかわれているのだという自覚はある。しかし、顔に出ないようにするのは大変だった。

「……おい、端末鳴ってんぞ。」
「あ、本当だ。ありがとうございます、周防さん。」

端末を見ると、バイト先からのメールだった。どうやら電車に乗ったときからマナーモードを解除するのを忘れていたらしい。シフトに入ってる子が急用で来られなくなったから急いで来てくれないか、とのことだった。それに了承のメールを送り、席を立つ。

「急用?」
「ハイ。ちょっとバイト先が人手不足みたいなので。」
「そっかぁ、がんばってね。」
「うん。」

元気良く応えて店の扉を開く。

「あ、天海ちゃん!」

草薙が照を引き止める。

「また来いや。」
「ッハイ!」

不意打ちに驚いたが、照は満面の笑みで応えた。
店を出て、駅へと走る。生暖かい向かい風が火照った頬にあたり、妙に心地好かった。


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