龍崎




シード連載主(初期の感じ悪い頃)と教えられる前なのに自宅を知っている龍崎君。


カチン、ときた。ただ、事実を述べられているだけにもかかわらず人を此処までイラつかせることのできる龍崎はある意味天才なのかもしれない。出会い頭からして最悪だった。まず一言目に「名前。一人か」から始まり、「仕方ないから一緒にクリスマスを過ごしてやるよ。どうせ、あんたはリア充を呪いながらのボッチだろ」あー、虚しい虚しいと嘲笑の意の笑みを深めて言う物だから「余計なお世話だ!別に私は寂しくないし!っていうか、龍崎も一人じゃん!」と言い返してやった。顔は良いけれどこれだから、彼女がいるとかいう話を全く聞かないのだろう。素直じゃなくて傲慢で、我がままで生意気で厨二で名前も皇児とか体を表していらっしゃるし!あーもうこいつの悪口をあげていたらきりがないよ!



「俺はいいんだよ。過ごそうと思えば、過ごせるからな。でも、あんたは違うだろう」可哀想に、と憐れむようにポツリとつぶやいた。息は白く凍りながら天へと上りやがては掻き消えてしまった。一々人の癇に障ることを言う男だとむかむかしながら言ってやった。「私だってそうだよ!」木野さんとかは私を見捨てずに過ごしてくれるに決まってらぁ!一言も男性とは言わないのがポイントである。……でも木野さんも友情より男を取るだろうか……そう思うと胸が少しだけ軋んだ音を立てた。寂しくはないけどなんか、靄がかかる。「……特別にクリスマス俺が過ごしてやらなくもないぞ、一人だとクルシミマスになっちゃうだろうしな。あんたの場合」嫌味たらたらで、私の手を冷たい手が掴んだ。ずっと外を一人でほっつき歩いていたのだろうか、ひんやりとしていてまるで死人の手のようだなとか思ってしまった。腹が立ったので振り払って、埃を払った。ったく、りゅうざ菌が繁殖してしまうじゃないか、ばっちぃ。



「いや、今日は聖帝と過ごすから。大体どうでもいいけど、私の家の前であんたは何していたのよ!」そうだ、一番はそこだ。街へ繰り出そうと家から出たところで、自宅の前でうろちょろしていた怪しい中防に出会えば誰だって、突っ込みたくなる。私に用事かと思えば用件を言わないし要領を得ない。詰り用事など最初から存在しないという事だ。その癖、私の意見をガン無視で苦しみますだのなんだの言って、何処かへ連れて行こうとするのだから困ってしまう。私にはきちんと行き先があってこれから、ケーキを取りに行くと決まっているのだ。その後は聖帝とシャンパンを飲みながら過ごすのだ。「べ、別にあんたを誘おうとか、そんなこと全然思っていないからなっ!」「何?あんた、私と過ごしたいの?そうとう寂しい奴だね……、シードが職員と過ごすクリスマスなんて」一人で過ごすのが虚しすぎて私と過ごしたい、と?でもまあ、それなら用件も理解できなくもない。それならそうと早く言ってくれればいいのに。私は極端に鈍いわけではないが、驚いた。でもなんで、また私なんだろうと首を傾げて、思案した。うん。嫌がらせの線が濃厚かな。



「う、煩いな!あんたが可哀想だからボランティアで来てやったんだ!特別にボランティアで会話もしてやるし!俺は優しいから一日、あんたと過ごしてやらなくもないし、あんたが望むなら……そ、その、それっぽく振る舞ってやるし」会話も全部ボランティアか。失礼な奴だな。大体それっぽくって何。と一瞬だけ思考を黒いものが蝕んだがすぐにああ、恋人かと気が付いた。龍崎の言葉が難解すぎてショートするかと思った。「誰が中防の餓鬼なんかと……恋人に見えるわけないじゃん。あんたと居ても、ただの子守りにしか見えないっての。大体そこまで虚しくないよ、私。そもそも、私聖帝と過ごすからね」あんたと居たら休み返上だよ!って悪態をついたら焦ったように「!そ、そうかよ」と言葉をまごつかせた。「……、じゃ。聖帝とシャンパンでも飲んで虚しく過ごすから、じゃあね」「あっ……、」一言発した後に、私を引き留めるように手を伸ばした。だが、今度は振り払われると既に分かっているのか私に触れることは無かった。どうやら学習能力はきちんと備わっているらしい。確かに私は人に触れられるのが嫌いだから振り払っていただろう。「……と言いたいところだけど。特別に、聖帝に話して龍崎も一緒に過ごせるようにしてあげるよ」「!あんたがいうなら……しょ、しょうがないな」なんかちょっと嬉しそうだなこいつ。そんなに寂しかったのだろうか。ま、いっか。どうせ、聖帝と二人で寂しく宅飲みだったし。こいつは嫌いだけどあんまりにも可哀想だし。ぴょこぴょこと聖帝の自宅を知らないのか後をついてくる龍崎を一度見た後に、視線をもう向けることなく歩き出した。


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