同じ手を使うのはなんだか気が引けた。何より、綺麗に引っ掛かってくれないだろう。だが、しかしストレートにそのまま渡すのはなんだか気が引ける。以前やられたことを思い返してそれは癪だと感じるのだ。私は葵が嫌いなわけではない。だけど……前のサプライズを思い返せば、こちらも何かを仕掛けたいと思うのは当然だと思う。散々、前日に悩んだ結果。ホワイトデーのお菓子を部屋に隠して、ヒントを机の上に残しておこうということにした。



「というわけで、葵ちゃん。隠したから!」
「へぇー。まあ、私も意地悪しちゃったから簡単に貰えるとは思っていなかったけどね」
そういって葵ちゃんが最初に向かったのは予想通り机で、机の上に一枚置かれていたメモ(本棚にある本の三ページ目)を見て本棚に向かう。勿論一発で辿りつくなんて簡単なことになっていない。本を開いてまた新たなメモを見つける。
「ねぇ、これ何枚あるの?」
「まだ、二枚目じゃない。確か五枚だったかな」



私がメモを隠した場所を次々に巡っていく。その右往左往する様を見て私が、小さく笑う。宝探しのようで、中々名案だったなぁ……と腕を組んで座っていれば三枚目を、枕の下から発掘した様で四枚目のメモ用紙を見つけにかかる。難しいところに隠しているわけではないのですぐに見つけたようだ。葵が私の元へ戻ってきた。
「もう、最初から名前ちゃんが持っているんじゃないの。意地悪」
「無駄に動き回っただけだったね、ごめんね?」



最後の紙切れには「葵の大切な人」と書いてやったのだ。我ながら失笑してしまうのだけど、普通に名前と書くのでは勿体ないと思い、こうしてやったのだ。ばれてしまっては仕方がない。鞄に忍ばせていた、包みを葵に渡すと今までの無駄な行動も許してくれたのだろうか無邪気な笑顔を浮かべてくれた。
「私ね、葵ちゃんが好きだよ」
前回のお返しも兼ねて、唇にキスをしてやった。空気が僅かに震えた。葵はやられることに耐性が無かったのか、真っ赤になって「もう!」と私の体を優しく叩いた。葵への思いを顧慮しても少々やり過ぎだったかもしれないけど、私は心から満足した。



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