ベッドに伏せて、雑誌をめくる。紙の擦れる音だけが聞こえていた。岬はそんな退屈な時間に飽きたのか、私の隣に倒れこむ。
「なぁ、今日何の日か知っている?」
唐突な質問に、驚きながらも「ああ、ハロウィンね」と岬に目もくれずに、また一ページめくる。岬はそんな私の様子が楽しくないのか、雑誌を睨みながら足をパタパタばたつかせる。小さな埃が舞いあがる。岬が私の体を抱き寄せる。
「……ハロウィン、……お菓子はあるか?」
「無いねー。欲しいの?買いに行く?」


ようやく、雑誌から顔をあげる。岬の顔は思ったよりも近くにあって心臓が跳ねあがった。
「……いや、そこまでして食べたいわけではないし……別にお菓子が好きなわけではない」
「いつも一緒に食べているのに?」
昨日も一昨日も一緒に部屋で、仲良く食べていたじゃない。と目で訴えかけると三日月に細められた瞳に私を映した。
「……名前と食べていると美味しく感じるからな」
「よくわからないなぁ……」
味なんていつだって、変わらないと言えば「そんなことない」と返ってくる。



「それよりも、俺は悪戯の方がしたいから、お菓子が無い方が好都合だ」
雑誌を取り上げて、乱暴に床に投げ捨てる。バサリ、と独特の音を響かせて床に広がる雑誌。それに目を奪われているすきに岬が私の上着のボタンを丁寧に外していた。胸元でやめて、鎖骨に口を付ける。チュ、と吸い付き短い音を立ててそこに跡をつけた。今つけたものよりも古いものがいくつか散らばっていたが、もうじき消えてしまいそうな程に薄れている。岬がその跡をもう一度戻すように、きつく吸い付く。大人しくやられっぱなしなのが嫌だったので私は岬に聞いてみた。
「……岬……、倍返しはあり?」
「……あり。やられたら、やりかえすけどな」
今年はお互い悪戯のようで。



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