佐久間




男っていうのはこの時期がある意味一番大変だと思う。もてない人も、もてる人も。意味は違ってくるけれど、両方大変だと思う。こういうとき私は女でよかったなーと思う反面少しだけ寂しく感じるのだった。佐久間が、どっさりと机に詰められていたチョコを必死に出しながらため息を吐いた。
「佐久間ぁ〜、大変だねー。私は羨ましいよ。こんなにチョコもらえたら私は嬉しいんだけどなあ」
佐久間はうんざりとした様子で、項垂れていた。あまりもてない男子からは殺気のような、羨ましいという視線が佐久間に突き刺さる。佐久間はそれを疎ましげに、睨みつけて追い払う。



「……お前なぁ、人事だからって……。直接手渡された奴はぜーんぶ断ったけどこうやって、机とかにいれられるとどうしようもないよな……」
うんざりとした顔でむせ返るほどのチョコの香りが充満するそれを机に並べる。私もチョコを今年も友達数名から友チョコなるものをいただいたが……。この数には到底勝てそうにもない。私がもしも男に生まれていたとしても、佐久間ほどもらえていたか……。というと。残念ながら、先程まで妬みの視線を送っていた男子側だと思うし。ああ、源田君も多分、恐ろしいほど貰っているんだろうな……。サッカー部はやたら、女子にモテるようなイケメン揃いだからだ。
「というか、好きな、奴から貰えなきゃ意味無いんだけど」



チラ、と何か意味を含んだ視線を片目で私に向ける。私はどういう意味かをすぐに察して机の中に入れておいたチョコを佐久間の机に置かれた大量のチョコに混ぜるように置いた。佐久間はすぐに渋い顔をして、私のチョコを分けた。
「有難う、でもこの大量のチョコと混ぜるな!わからなくなるだろう!」
ぷんぷん怒りながら、それを特別なものを扱うように鞄の中に入れて他の紙袋に入れた。
「そこまで大それたものじゃないのに……。あ、今年はペンギンさんの形をしているよ。今日一日、大変かもしれないけれど、頑張ってね」
苦笑してそう告げ、佐久間の眼帯にキスを一つだけ落とすと佐久間に引き寄せられた。抵抗はしないけれど、少しだけ困ってしまう。先程の行為が恥ずかしいせいもある。
「眼帯じゃなくて、口にしろよ」
……教室の中なので、それは勘弁してください。というより先に佐久間の唇が私の唇をふさいだ。



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