半田




「好きな人が出来たわ〜」
そう、嘘をさらりと真顔で吐くと半田はぽかんと口を大きく開いて目を見開いて私を見つめた。お前は突然何を口走っているの?って感じだった。そこまで、おかしなことを言ったつもりはなかった私のほうが逆に面食らってしまう。半田がそこまで、動揺するとは思っていなかったのだ。私と半田はそもそも、幼馴染だからてっきり「そうか」程度で私がさらっと言ったのと同じくらいあっさりと流すものだと信じて疑わなかった。



私のことなど余り興味がない、と思っていたのだ。無言のままではいけないと思って咄嗟に言葉を続けた。
「だから、協力と応援よろしく!」
ニッと、口角を持ち上げて言うと、半田は更に動揺した。目を泳がせていて困っているようだ。
「え?え……?何、本気で言っているのか?サッカー部のやつ?」
「うん。風丸君が可愛いから、もう毎日、風丸君で頭が一杯さ」
ほぉ、と熱のこもったため息とともに薄水色の彼に視線を送った。勿論、演技だ。咄嗟に吐いた嘘で塗り固めると半田はますます信じきったようで神妙な面持ちをしていた。その様子は、完璧に信じているようだった。因みに風丸君と言ったのはさっぱり、理由はない。たまたま、彼のことが頭を掠めたから……としかいいようがない。風丸君は確かに格好良いけれど(若しくは可愛いけど)残念だけど彼には気がないし、多分彼も私のことなんてアウトオブ眼中だろう。



悲しいけれど、容姿も性格も彼に劣る自信がある。相手にもしてもらえないだろう。ああ……言っていて悲しくなってきたよ。うん、もうこんなこと考えるのやめよう。こんなネガティブなことを考えるよりはまず、目の前の半田の面白い様子を見ていよう。
「……いやだ」
ボーっとしていたら、半田がいきなり嫌だ。といってきた。意味わからない。主語がないぞ、半田。と、目で訴えかけていたら半田は顔を引き締めて真剣なまなざしを向けた。
「……お前を誰にも渡したくない!名前が好きだ!」
急にそんなことを宣言してきて、私の体を強く抱いた。今度は私が動揺する番だった。顔が見えないけれど、半田の香りと温もりが私を包み込んだ。エイプリルフールの嘘でした。と明かすまでこのままだったのは言うまでもなく。



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