アラタ




さっきからアラタがなんだか騒がしいのだ。周りも校則の事とか忘れて浮かれきっている、何故か。今日は恋人や恋する乙女たちの一大イベント、バレンタインデーだからだ。そりゃ浮かれもするよ。ホクホク顔の男子や恥らう女子。うぅん、青春だ。この時期は甘ったるい匂いがする、何処もかしこも、その匂いで充満して私の胃を刺激するのだ。アラタは何故、こんなに煩いのだろう。「あー、食いたいなー!」凄く遠回しでわからない、と首をわざとらしく傾げれば。アラタの顔が絶望に染まった気がした。



「ハルキもヒカルも皆、沢山貰っているんだけど!」アラタだって貰っているじゃあないか、何がそんなにご不満なのかと思ったが敢えて伏せて言わなかった。「所で、何が食べたいの?」「た、例えば甘い物とか!」チラッと私の顔を見て、おねだりして来るのでなんだか可愛い生き物に見えてきた。これは早急に入院が必要ですな。「あれ?アラタは常備しているんじゃなかったけ?」「い、いや、それは……その、今日は切らしていて!」



あくまでも自分の口から、チョコレートをくれとは言う気が無いらしい。でも、そんな子犬みたいな顔で言われても、意地悪したくなってしまうよ。「甘い物と言われても……飴ちゃんでいい?」どこぞの坊主がよく食べているし、と棒付きのキャンディーを勧めてみた。そしたら、案の定「違うんだよ!今は飴の気分じゃないんだ!もっと、こう、甘い物で……!」私は、アラタが本当は何を要求しているのかわかっているつもりだった。ただ、じらしているだけだ。傍から見たら意地の悪い人間だろうし、私自身も意地の悪い人間だと思う。でなければ、(心が清い人は)こんなことをしないだろう。



というか、アラタも恥ずかしがっていないで、チョコが欲しい!と言えばいいじゃないか、何をそんなにもじもじと恥ずかしがる必要があるのだろうか。面白いので、このまま放置しようだとか、いうまでチョコはお預けにしておこうとか邪な事を考えてしまうじゃないか。「だぁー!もう!チョコ!チョコが欲しいんだよ!」痺れを切らしたかのように叫んだので、周りの仲間たちの視線が一気に我々に突き刺さったがアラタを見て、ああ、なんだ……と言わんばかりに視線を外した。「誰でもいいなら義理チョコでもいいからくれーって言えばいいじゃん」まだ、意地悪続行中である。



「もうさ、今ので気づいたんだけど名前って意地悪だし、わざとだよな」流石にそこまで純、もとい鈍感じゃなかったか、アラタも。「名前からのチョコが……その、欲しいっていうか……もういいじゃん!」「はいはーい、用意していますよ、純情ボーイ。そんなに恥ずかしかったのかな?」チョコはねたっぷりと気持ちの籠った奴で、ちゃんと本命ですから、安心してくださいよ。と耳打ちしたら、アラタの耳がみるみると赤く成っていったので面白い。これだから意地悪はやめられないのだ。



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