征服 腰を撫でる手を掴むと、不機嫌そうに抱き竦められた。 後ろから腰を抱く彼を振り向けば、案の定仁王君だ。 「どうかしたの?」 首を傾げれば、ペロリと首筋を舐められた。 「なんじゃ、おまんが無防備にしちょるのがムカつく」 「相手が仁王君なのに?」 言外に、他の人ではそうでもないと言えば、嬉しそうにピヨと声を漏らした。 「そんでもナリ。俺が神流に何するかだってわからんよ?」 「仁王君なら何されてもいいんだけどな」 小さな声で呟いたそれは、仁王君にはバッチリ届いていたようで、ニヤリと妖艶に笑う。 「本当に?」 頷く前に、耳を甘噛みされた。 たまに執拗に舐めまわされて、たまに力強く噛みつかれる。 じわじわと噛み付きの力が強くなっているように感じたが、どうやら当たりだったようだ。 何回かそれを繰り返されるうちに、プツリと耳の皮膚が切れる。 「ん、」 たらりと流れ出る血を、仁王君に丁寧に舐め取られた。 じんわりと痛む耳に、原因を睨む。 仁王君はそれを何処吹く風で口角を上げた。 「こんなことされても、さっきの言葉…言えるんか?」 彼の口の端についている赤い跡が私の血液だとわかり、言いようもない感覚が私を襲う。 「傷物にしても、ちゃんと仁王君がもらってくれるんでしょ?」 少し驚いた仁王君は、それでもすぐに笑顔を取り戻した。 「もちろんぜよ」 その時ペロリと口の端の血を舐めとる仁王君に感じたこの感情はきっと…。 征服感を覚えて ←→ BACK/HOME |