Vol.1/異次元バズーカ




「異次元バズーカ?」

薄暗い部屋の中は無数のコードとおびただしい数のディスプレイとキーボード、そして何に使うのかもわからない機器が大量に占めていた。

その中央、申し訳程度に置かれたソファに小さな影が腰を落ち着けている。

その小さな影ことボルサリーノを目深に被った赤ん坊が、訝しげに聞き返した。

その正面ではパーカーと眼鏡で顔のほとんど見えない少女が頷きながら何やら凄い速さでキーボードをタイピングしている。

「一個だけ座標値が確定したのがあってね。テストは完了したからあとは実践なんだ」

「……」

赤ん坊は黙ってコーヒーカップを傾けた。

中身は芳ばしい香りを放つエスプレッソ。

やがて赤ん坊はニヤリと口元を歪めた。

赤ん坊とはとても思えぬニヒルなそれ。

どうやらろくでもないことを思い付いたらしい。

「おい、奏多―…」



       * * *



並盛神社と表記された境内の中、リュックを覗き込んでいた赤ん坊はひとつ頷いた。

「…よし。要りそうなもんは持ったな」

「リボーンのコーヒーセットが要りそうなもんに入ってるのは解せないけど」

「つべこべ言ってんじゃねぇ。脳天に風穴あけられてーのか?」

「滅相もございません」

ゴリッと額に押し当てられた銃口に少女はあっさり両手を上げて降参を示した。

その出で立ちはパーカーとショートパンツ、ブーツとリュック。

顔はゴーグルで隠れてやはりわからない。

一方、赤ん坊は黒いスーツにボルサリーノ、赤ん坊らしさと言えば胸元の黄色いおしゃぶりか。

「…でさ、リボーン。…マジでやんの?」

「マフィアに二言はねぇ。やると言ったら殺る」

「すいません後半誤字変換してます」

なんやかんやと言いながら少女の手はガシャコン、と紫色のバズーカに弾を設置する。

傍らに置いたノートパソコンには素人には到底理解できない数値がズラリと並んでいた。

「…うっし。準備整いました」

少女はそれを眺めていたがやがてキーをひとつ叩くとノートパソコンを閉じてリュックに突っ込んだ。

そして立ち上がる。

「よし。じゃあ行くぞ」

赤ん坊は軽く地を蹴って少女の肩に着地した。

少女はバズーカの発射口を自らに向け、そして引き金を引いた。

独特な爆発音と煙が場を支配した後、煙が晴れたそこは無人となっていた。





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