青空の下で | ナノ

ぺら、
ぺら、
開くページ全てに奈良家頭主についてこと細かに書いてある。
その量に私は驚いた・・。
奈良一族は長い歴史を持つ旧家だと言うことは知っていたが、ここまで長い歴史だとは・・・。

(・・・私、一族のこと何も知らないんだな・・)

そう思うと自分が情けなくなった。
奈良家は森だけが広いわけではない、屋敷も旧家さながらの立派なもの。
縁側だってあるし、観賞用の池だってあるし。
この世界に来てから驚いたうちの一つに、奈良家の敷地面積の広さも十分に入る。

「ね、みんなそっくりでしょう?」

真横から覗くヨシノさんの声に、若干ぼーっとしていた意識は引き戻される。
私はヨシノさんが指差す写真に急いで視線を向けた。

「奈良の家系は、黒い髪と黒い瞳しか生まれて来ないんですって
しかも、皆前の頭主の面影をかなり感じさせるってずっと言われてるの」

私もここに嫁いでからようやくこの家について知ったのだけどね。
ヨシノさんは微笑んだ、まるで昔を思い出しているような様子だった。
言われてみた通り、確かに記録として残っている写真は、どの頭主も似た容姿を持っている。

「それが何でか、分かる?」

ごそごそ、とヨシノさんはもう一冊の本の方も同時に開く。
・・・・これは、アルバム・・かな?

「あの人の両親、几帳面だったらしくてね。別個にずっと記録もとってたみたいなの。現頭主様の成長記録」

現頭主様、とからかうような口調で言った。
それって紛れもなく、シカクさんのこと・・・。
ちらりとそのアルバムを見てから、渡されるままにそっと手にとって読んでみる。
頭主就任の日付には、面倒そうな表情を浮かべながらもどこか嬉しそうなシカクさんがうつっていた。
・・若い頃からシカマルと瓜二つにしか見えない・・・。
ぺらぺらと前の方のページを見てみると、小さな頃の写真なのだろうか・・小さいシカクさんの姿があった。
その姿を見て私も目を丸くした・・・・・。

「・・・影使いの一族はね、どうしても頭主の姿に自然と似てくるんですって。
跡継ぎには自分の血だけじゃなく、自分の姿の影を分けて生むようなものだから。
だから、頭主の特徴が色濃く受け継がれるのよ。
よく生き写し、とか言うでしょ?それを文字ってここの一族じゃ影写しって言われる、それくらいにそっくりになっていくのよ」

あなた、若い頃のお父さんにどんどん似てきてるわ。
ヨシノさんにそう言われ、ああ、なるほどなと感じた。
後でもう一回鏡を見てみれば、すぐにわかるだろう・・・私は、奈良ロクという人間は父親似ということが。

「はー、誰が言い出したんでしょうねー。父親似の娘は美人になるとか。
生まれた頃はずっと女の子らしかったのにね、少しずつ変わってきちゃうんですもの」
「か、かあさん・・・」
「ふふ、冗談よ。娘を顔なんかで選ばないわ。それに・・・あの人に似てるなら、より実感が湧くしね」

の、のろけ!なのかなやっぱり!
照れる様子もなく、今度は私のアルバムをめくるヨシノさんの横顔はとても綺麗なものだった。

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