青空の下で | ナノ

「全くもう・・!どうしてあの子達は・・!」
「ま、まあまあ悪気があってやったんじゃないし、ただの悪戯心じゃ・・」
「その悪戯にやられる方もやられる方でしょう・・」
「・・・うう」

痛いところをつかれたな、と。
数分後の職員室、例の悪ガキ二人は脱兎のごとく笑いながら逃げていった・・。
イルカはティッシュを鼻に詰めた少し情けない姿で椅子に座っていた。

「でも、心配ないですよ。あいつらはあいつらなりにきっと成長する、そう信じてますから」

・・・スズメが先程何を言おうとしたのかは分かり切っていた。
このところあの事件を思い出す機会なんてなかなか無かったし、
イルカにとっては思い出したくもない事実でもあるが・・。
あんなに小さな子が虐げられる世の中なんて間違っている、と・・自分は言える。
あの子は、里の為に・・・九尾に殺された者達だけが犠牲者じゃない、あの子自身も犠牲者なんだ。
そして、その隣にいるだけであらぬ噂を立てられるロクも、
自分達が作ってしまったこの環境の犠牲者・・そう言っても過言ではない。

ナルトも犠牲者の一人なのだ

・・・自分は、一時悲しみにくれるばかりで、
肝心の、ナルトが人柱力になってくれた、ということが見えていなかった。
あの時の自分程嫌なものはない・・そう、自分のこの行為は贖罪でしかない・・。
けれど、ナルトと過ごすうちに単純な考えは更に変わっていった。
自分はナルトを守りたい。
そして、立派な忍になれるように・・・応援しか出来ていない状況だが。



『・・・・私、ナルトとは・・・・ずーっと仲良くやらせてもらうんで・・・』



・・・あの子の、初めての友達。
本当に喜んでいたのは、自分かもしれない・・・イルカはそう思った。
自分以外にもあの子の傍にいてくれる子、
掴みどころのない性格はどこか近寄りがたい雰囲気をかもしだしているが、何故か彼女とナルトが一緒にいるところを見るとひどく安心するのだ。
あの子の寂しさを紛らわす、それだけじゃない、何かがナルトも自分ですらを惹きつけている。

「・・・むしろ、ロクには感謝していますよ、本当に・・」
「イルカ先生・・」
「イタズラは別物な、って注意した筈なんですがね、全く言うことを聞かないやつらで」

そう言うイルカの横顔はどこか楽しそうだった。
スズメはその様子を見て苦笑する。

「俺だけじゃ、ナルトを笑顔にさせることは難しいでしょうから・・・
ロクだけじゃない、誰もがナルトを認めてくれる・・・そんな未来が来たら、
いえ、絶対そういう未来にしてみせたい・・それが俺の目標なんです」

あの子の・・・ロクの前では本心を出せる。
ナルトに関する何もかも、きちんと話せる相手は今まで子供の中にはいなかったから。
ふ、と話している途中で思い出した。
何でも悩みを話せる、そんな存在が昔自分にもいたことを・・・。

(ああ、そうか)

彼女が持っているもの。
それはいつか自分が失ったもの。
まるで空間を包み込むような、あたたかさ。
ロクと一緒にいると感じる何かの正体が今分かったような気がする。

(・・・・似て、いるんだ・・)

いつか・・・九尾事件の時に失った、自分の大事な大事な・・・。
同学年の子には決して感じることの無い、それ。
まるで母ちゃんのようだったと、錯覚したのだ・・。

母性

自分では決して与えられないもの。
それが母性、なのだ。
ならば、より彼女にはナルトの傍にいてくれないと困るな・・・。

イルカは、優しい顔をしていた。
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