青空の下で | ナノ

「全くもう・・!」

お昼休み。
アカデミー職員室、くのいちクラス担任のスズメは未だ怒っていた。
原因は言わずもがな・・その様子に気付いたのか隣の席だったイルカが声をかける。

「はは、またロクが何かやらかしたんですか?」
「イルカ先生!そうなんですの、奈良さんったら全くもう!」

くのいちクラスの奈良ロクと言えば、男子クラスのうずまきナルトと肩を並べる程の悪ガキだ。
アカデミーに入ってからの二人の態度は何度も授業脱走、
片やサボリ常習犯、片や悪戯常習犯、ほとほと手に余る行動をする子達だ・・。
先生方にも素行の悪さはよく伝わる・・主にこの二人の先生から・・。

「また眠っていたから抜き打ちテストをさせたんですよ、そしたらもう・・あんな下らない術を・・お色気の術だなんて誰が教えたのかしら・・!」

スズメの言葉にイルカはげほげほと飲んでいたお茶を前に咳込んだ。

「・・多分、いや、絶対・・ナルトでしょうね・・お色気・・げふん、変化の術はあいつの得意分野ですから・・」
「しっかり管理をして下さらないと困りますわ!くのいちクラスにハレンチを持ち込まれては!」
「い、いや!承知してますが!スズメ先生もロクを逃がさないで頂きたい!こないだまた私が見つけましたよ・・」
「うう・・お互い耳が痛いですわね・・」

はあ、と二人してため息をつく。
スズメもイルカもアカデミー教員として職に就いた時間は長いのだが、
悪ガキ二人組はそのキャリアすら無視して飛び回る、大変なものだ。
だが、二人とも、生徒に関する文句は言ったりしない、まさに教師の鑑であった。

「・・立たせても反省の色がない子はあまりいませんわね・・」
「あの子はマイペースすぎますからねえ」

まあ、そこがいい点でもありますが!
イルカがにかっと笑うとスズメもつられて笑った。

「・・本当に、なんであの子達が一緒になるようになったんでしょうね」

ナルト本人も、子供達も知らない秘密を自分達は知っている。・・九尾の悲劇を。
大人しか知らない筈が、その嫌な雰囲気を感じとって最近はナルトと同年代の子供でさえもナルトを避けるようになっている。
・・・そして、その隣にいるロクですらも。
果たして本人達が気付いているのかどうかは分からないが、悪い噂が二人の耳に入らなければ・・。

「・・・ねえ、イルカ先生・・・・」
「はい?」
「あの子は・・奈良さんはあの事件のことは当然知らないでしょうけど・・
奈良さんにあの子が近づいているのを見ると、正直・・私怖いんですの。
確かに、九尾の・・ナルトくんに同情はすべきです。だけど・・奈良さんは、私が受け持つ可愛い生徒のうちの一人です。
ああ、何を言ったらいいやら・・・」

大丈夫ですよ
イルカはただ一言そう言った。

「・・あの子達は、お互いに惹かれ合って、友達になったんです。
それを私達が無理矢理に引き剥がすなんてあんまりだとは思いませんか?
息もあってるのが何よりの証拠ですよ、まあ悪戯だけはしないでほしいんですけどね。
情けない話、この間もお色気の術でその・・・」

ごにょごにょと照れくさそうに言うイルカに、スズメはどうしてそこまで信用できるのだろうか、と
そして、彼の境遇を思い出して、はっとした。
・・・彼は、九尾に父も母も・・しかし、彼だからこそ、ナルトのつらさが理解できるのであろう。

「・・そうでしたね。失礼しました・・」



「「イルカせんせー!」」

次の言葉を出そうか迷っていた時、その噂の本人達が職員室に二人揃ってドアから首をのぞかせていた。

「おっ、どうしたお前達?」
「にしし!あんなー新しい忍術二人で考えたんだ!見てくれってばよ!」
「・・・って、ここでか?!」

イルカの言葉も追いつかないうちに、ナルトとロクの二人は同じ印を組む。
子供だからか印を組むスピードははるかに自分達より遅い、
その印は何を意味するものかイルカとスズメはすぐに理解し、そして焦った・・・。

「わっ、こらこんなとこで・・・!」
「はしたない!おやめなさ・・!」

「「ダブル変化の術!」」

どろんっ
そう・・・二人の組んだ印は"変化の術"
先程してやられたスズメも、普段からやられているイルカも嫌な予感しかしなかった・・!

「「お色気・女の子同士の術ー!!」」
「ぐはあっ!!!」
「キャーイルカ先生いいい!!」

口に出すのも憚られる、はしたない格好をした裸体の別人の女性が二人・・・。
失血死するのではと思うくらいイルカが鼻血を出す横でスズメは真っ青になったり真っ赤になったり。

「あっあっあなたたちいいい・・!」
「・・・あ、スズメ先生用に、お色気ホストクラブの術、ってのも考えたんですけど・・・」

どうですか?とにっこり笑う受け持ちの生徒。



「出て行きなさあああああああああい!!!」



職員室から大声が聞こえてくるのに時間はかからなかった。

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