青空の下で | ナノ

多分あっけにとられて馬鹿面を私は晒しながら名前を呼んだことだろう。
その少年・・・キバは、名前を呼ばれたことにん?と唸った。

「何でお前、俺の名前」
「え、いや、私、アカデミーで・・・・」

・・・・こっちが何で、と聞きたい側なんだが。
侵入者を追って来てみたらその正体はこの子で、しかも私達の森の小鹿を腕に抱いて。

「・・・ああ、もう!どいてってば・・・!」

聞きたいことは色々あったが、自分の周りにまとわりつく蟲達の羽音やなんやらで話せない。
バッ、と蟲達を散らす目的で手を振ったが、それは逆効果だったらしい。
ぞぞぞぞ、と塊になってロクの片足を飲み込んだのだから背筋が凍った。

(ひいいいい・・・・!)
「おーいシノ!この蟲止めてやってくれー!怪しい奴じゃないみたいだ」

キバがそう叫ぶと、蟲達は何かを感じ取ったかのようにロクの周りから散らばり、
一直線にある方向へと向かっていく。
蟲、シノ、
ここまで言われれば、その先にいるのは誰でもわかる・・・。

「・・・怪しくない奴が、クナイを構えているとは到底思えないがな・・」

暗い木の陰からスッと出てきたのは、サングラスが特徴的な少年だった。
その周りを蟲達が囲んでいる・・・シノだ、間違いなく。
本物だ、と感動する時間は、シノが私が落としたクナイを拾ってこちらに突きつける様を見ればすぐになくなった。
すぐ両手を上げて、苦い顔で私は言う。

「・・・私、アカデミーくのいちクラスの奈良ロク・・・・怪しくない、から・・・」

とりあえず、そのクナイ下げて?
内心冷や汗かきながらそう彼のサングラスの下にあるであろう瞳に語りかける。
少しこちらの表情を見て、シノはクナイを放った。
カッ
私の足の近くの地面に落ちた。

(・・・この子、怖い・・・!)

まあ、投げ返してくれたということは敵意もなくなったと考えていいのだろうか。
おずおずとクナイを拾い、すぐにポーチに戻した。

「・・・・犬塚キバ、と・・油女シノ・・・だよね?君達はどうしてこんな所に・・・?」
「それはこっちの台詞だろー?何なんだ、さっきのクナイ!ていうかお前こそ何でここにいんだよ・・えーっと、ロク?って言ったか」
「・・・いや・・・何でも何も・・・ここ、奈良一族の私有地だし・・・」

説明するのも面倒だ。
その一言を言った後、キバは目をぱちぱちとさせた。

「・・・ここ、お前ん家?なの?」
「ていうか、ここ、私達以外立ち入り禁止・・・なんだけど・・・」
「・・・うっそ、マジで?」
「・・マジで」

この子達は一体ここで何をしていたのだろうか・・。

「・・・どうやら、謝らねばならないのはこちらのようだな、キバ・・・」

シノの声が少し低くなった。
キバが心なしか動揺しているように見える。
私自身もこの状況を理解するのに数十秒かかった・・・・。

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