青空の下で | ナノ

奈良家私有地の広い森。
リク丸達鹿を多く飼っているこの森は自分達以外は当然ながら立ち入り禁止となっている。

「おう、ロク?先に行ってあいつらの様子見てきてくれ」
「うん!」

鹿の角は薬のいい材料になる。
シカクさんに言われて私は森への道をたったっとかけていた。






―第11話 森の迷い子―






「よしよし」

しん、とした森の中。
響くのは私の足音と鹿達の動く音だけ。
擦り寄ってくるリク丸を撫でながら皆の角の様子を見る。
大きな角を持つ鹿から先にその角を削り取ったり少しだけ切ったりする、
自分の仕事はシカクさんが来るまでにこの大勢いる鹿を、薬用に使える子使えない子と場所を分けることだ。
これが意外と骨が折れる。

「・・・お前たちはかわいいねえ・・」

だが、ここの鹿達は素直に命令に従ってくれる。
それ故自分のような小さい子供でも、奈良の者ならば警戒はしないようだ。
君はこっち、君はあっち、と指で指示をするだけでぱっぱと分かれてくれる。
その間にもぞくぞくと鹿が出てくるのでキリが無い。
とりあえず、最低限薬の作成に必要な子だけ集まってもらってその場にいた。

「いい子で、入り口で待ってるんだよ・・?」

そう言ってロクは森の奥の方へ足を進めた。
見回りの意味もあるが、自分自身この森を全部は把握し切れていない。
この奥も見たい、と探検欲のようなものがここに来ると湧いてくるから。
・・・ん?
一匹の鹿が、こちらに向かってすごいスピードでかけてきた。

「・・・っと!どうしたの・・?」

流石に危ないので角を避けながらその子の頭を撫でる。
小さな鳴き声を出しながら荒い息をしていた。
・・・何があったのだろう・・・?
その疑問が解けるまで数秒かからなかった。



「!」



人の、気配。
たんっ、と小さく鳴ったのは木を蹴って移動する音。
・・・・侵入者だ!

「お父さんを、呼んできて・・!」

その子に告げて私は急いで今かすかに見えた人影を追った。

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