青空の下で | ナノ

「・・・・ロク、ロク!やっぱりいいってばよ!別に俺は・・・!」
「ナルトが良くても・・・・私はよくない、の!」

泣き止んでくれたナルトを無理矢理連れて、私は来た道を辿って・・・また商店街に戻ろうとしている。
理由?
聞く方が野暮でしょうが・・・・恨み言の一つでも言って聞かせないと気がすまない!何だったらあの店主脅してでも。

「それに・・・ナルトは、立派な忍に・・・・なりたいんでしょ!皆に、認められるくらいに・・・立派な忍に!
だったら・・・・これくらいで、負けちゃ駄目・・・だよ!いつまで経っても・・・・こんなんじゃ、認めてもらえないよ・・・?」
「!ロク・・・」

ふ、と嫌がっていたナルトの手から力が抜けた。

「・・・・行っても、いい・・・よね・・?」
「・・・お・・・おう!」

ナルトにも、無理矢理で申し訳ないのだけれど覚悟を決めてもらった。




「ちょっと!!今のはひどすぎるんじゃないの!!」




でも。
いざナルトを連れてもう一度戻った時に真っ先に聞こえた声は・・・私のものじゃなかった。

(・・・え?)

先程ナルトが追い出された店の店主らしき人に怒鳴っている女の人。
皆、戻ってきた私達二人とその人を交互に見ていた。

「・・・だ、誰だってば・・・?あのおばさん・・・何か怖そうだってば・・・」
「・・・母さん・・・」
「えっ、ロクの!?」

私の呟いた言葉にナルトが驚く。
ポーカーフェイス気取ってるけど、私自身すごく驚いている。

「あんな小さな子に物一つ売ってあげないなんてどういうつもり?可哀相じゃない!」
「何をとち狂ったこと言ってるんだ!!あんた、あのガキのこと知らないワケねぇだろう!?」
「ええ、知ってるわよ?けど、それが何なの!?今のこととどう繋がるわけ?あの子本人は何もしてないじゃない!」

頭の中に叩き込まれた。
奈良ヨシノさんと言う人間は、正義感がとても強い・・・立派な女性なんだと言うことを。
・・・ナルトを理解してくれている人が、イルカ先生の他にもいることは分かっていた・・・でも、こんなに近くに・・・いてくれたなんて。

「何かしたかだと!?ふざけんな、あいつは俺達の里を・・・!」
「あら?それ以上言うことは禁じられているのでなくて?特に・・・あの子の目の前ではね!」

周囲の視線がまたこちらに向く・・・店主が口をぐっとつぐんだ。
当然だ・・・・この頃はまだ、九尾の人柱力について触れることはタブーなのだから・・・。
その証拠に、ナルト自身もどんな理由で虐げられているか分かっていない。
同じだ、私が言いたかったことと同じ・・・。

(母さん)

親子は似ると言うけれど。
ヨシノさんと、同じ考えを持てるような人間になってよかった・・・!
よかったね、ナルト・・・君を分かってくれる人はまだいるんだよ。

「それに・・・」
「それに!・・・・私のお父さんは・・・・忍だから・・・」

ヨシノさんの台詞を繋げるように、私が口を出してその店主に近付いた。
それはそれは不気味な笑みと、ナルトを連れて。

「何か・・・・・ここで、騒動が起こったら、すぐ・・・火影様のところに、今のこと伝わりますよ」

ザァ、と店主の顔が青ざめた。
子供にしては知りすぎてることを不審に思われたくないので、ハッキリとは口に出すことは出来ないけれど・・・火影様の一言は相当きついらしい。
くるりと周囲を見渡し、私はなおも続ける。

「・・・・見て見ぬ振りも・・・・当然、同罪・・・・ですよ・・?」

ただ傍観しているだけの奴もざわざわと、次第に騒がしくなっていった。

「・・・立場が弱い者をいじめるのが、大人のやることなの・・?」

あ、すごい顔歪んだ。
流石に今の一言はきたらしい・・・全員の胸からぐさっ、という擬音が聞こえそうなくらい閉口し、静まり返る。

「最っ低だね、おじさん達」

私の言葉が出る度、どんどん空気は沈んでいった・・・。





「ナルトに、謝って」





一通りの文句を言い終わって、ようやく私は本題に・・・・一番言いたかったことに触れた。

「悪いこと、したのは・・・おじさんの方なんだから」
「まさか謝れない・・・なんてことはないわよねぇ?いい大人がだらしないわ」

・・・・いつの間にかヨシノさんと二人で説教していた私。
私の目も、ヨシノさんの目も怖かったんだろう・・・店主はびくっと肩を震わせて、渋々と「すまん」と言った。

「「次やったら土下座だから」」

二人して店主と周りの奴らをその視線で威嚇する。
・・・よかった・・・・ヨシノさんの血が混じってて・・・・何か、色々とはっきり言える勇気が出た・・・。

(・・・・ほら、ナルトも・・・何か言ったら・・・)
(で、でも、)
(・・・・じゃ、こんなの、どう・・・?)

こそこそとナルトに話しかけると、その言葉ににぃっと笑った。

(せーの)
「「ガキにびびってんじゃねーよバーカ」」

してやったり顔で、いらついてる心を露にした台詞を言ってやった。
さっき以上に周りの人が口をつぐむのが丸見えで。
ああ・・・・・不謹慎すぎるけど、こういうのは快感だなぁ・・・・ざまぁみろって感じで。
・・・というか、最近これ口癖になってきてる・・・。

「よし、帰ろうナルト」
「おう!」
「いい?次こんなことしたら火影様に制裁してもらうわよ!?」
「「「す・・・すみませんでした・・・!!」」」

青白い顔で怯えながら謝る人達とは逆に、意気揚々と商店街を出て行く三人がいた・・・。


>
- ナノ -