「・・・っ、ナルト・・・っ!ナルトってば!!」
私の呼ぶ声にナルトは聞く耳持ってくれない・・・。
・・・私の足は早くない、体力だって誰よりも劣ってる・・・・ちょっとずつ引き離される距離。
どうしたものかと思った。
影で繋ぎとめることも考えたが、修行中の身じゃこの距離でも届かない。
(・・・!)
走る景色の中、影を作っているもの・・・・電柱の姿。
これだ・・・そう思い、あの印を組む。
「影縛りの術!!」
ぐん、と伸びた私の影が電柱のそれと重なった。
影はその質量を借りて大きく、そして長く伸びる。
這いずる様な音を出しながら、私の影は壁伝いに伸びて・・・ナルトを捕らえた。
がくん、とナルトの動きが止まる・・・。
(影縛りの術、成功・・・!)
ナルト、ともう一度呼びかけて・・・影を緩めながら近付く。
「・・・・ナルト・・・?」
ようやくその背に追いついた、肩を叩いて振り向かせた顔には、
・・・涙が流れていた。
「・・・・ロク・・・?変なとこ、見られちった・・・な・・・」
「ナルト・・・」
「・・・気に、すんなってば。俺、あそこ行くといっつもこうだから・・・気にしないでくれってば・・」
強がってるの、バレバレだよ。
こんなに肩震わせてるのに、どうして。
「・・・もういい!もう、いいよ・・・ナルト・・・」
ぎゅ、ときつくこの腕で抱きしめた。
ああ・・・・悔しい。
もう少しだけ、この身体が大きかったら・・・・この子を包み込めるのに。
「分かってるから・・・・全部、分かってるから・・・・いいんだよ。私の、前で・・・我慢しなくてもいいんだよ・・・!」
「・・・へへ、大丈夫だってば。俺、こういうの、慣れてるから・・・・平気だってば、それに・・・」
「いいの!」
ぐっとナルトの顔を胸に引き寄せた。
表情が、どこからも見えないように。
「・・・・悲しい時は・・・思い切り、泣いていいんだよ・・・。ね、今は私しか・・・いないから・・・」
そう言うと、まるでせき止めていた感情の波が押し寄せたようで、ナルトが泣いた。
「大丈夫・・・・大丈夫だよ、ナルト・・・・」
・・・慰める言葉が見つからないのに・・・・何が大丈夫、だ!
金色の髪を撫でて、そう言ってあげるだけで精一杯だった・・・・。
酷い・・・・こんなの酷すぎる!
ナルトが何か悪いことをしたと言うの、そんな筈ないでしょう。
ただの捌け口が欲しいだけじゃないか、九尾に対する捌け口が・・・!
(許せない)
こんな小さな子を、傷つける輩は、絶対に。
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