青空の下で | ナノ

「春野サクラぁ?あー、知ってるわよ」

あの後、結局課題をクリア出来たのは私達ぐらいだったらしくて。
何とか無事に授業が終わって・・・その日の下校の時、私はあの子のことをいのに話したところ。
知ってる、とすぐに返事が来たので驚いた。

「・・・・知ってた、の?」
「んー・・・何て言うかさ・・・・あたしらのクラス、嫌なグループがいるじゃない」
「・・・・ああ、アミちゃんとか・・・・そこらへんの」
「そう、それ」

いのの言う、嫌なグループというのは・・・私が今言ったアミちゃんという子を中心につるんでいる女の子のグループだ。
いのとは違う意味で、気が強い女の子で・・・どこか人を馬鹿にするくせがある。
俗に言う、いじめっ子タイプだ。
私も何回か馬鹿にされたことがある・・・まぁ、日頃の授業での私を見れば誰だって言いたいだろうけど。

「そいつらがまた誰かをいじめてるらしくてね・・・」
「・・・・その標的が・・・?」
「そ・・・。確か、サクラって子になってるらしいんだけど・・・」

正義感の強いいのらしくない、と思った。
いのなら、そういう子はすぐに助けに行くと思うのに。

「助けに行きたいのは山々なんだけどさぁ」

まるで私の心を読んだかのような台詞に一瞬びくっとした。

「・・・・あいつら、先生や他の子が周りにいる時はぶりっ子しててさぁ・・・なかなかボロ出さないのよねー。
そのサクラ、って子もあいつらがいない時は一人でどっかに隠れてるみたいだし・・・・」

それに、といのが苦笑する。

「・・・・一回あいつらに問いただそうと思ったんだけど・・・あたし、自分の性格短気っぽいって分かってるから。
そういうことしちゃうとただの、私とあいつらの喧嘩になって・・・いじめのこと、うやむやになりそうでしょ。だから、まだ下手に手出せないのよ」

目から鱗。
・・・・やっぱりいのはいのだった。
自分の力を理解した上で、こういうことを言えるのだから。
私だったら、すぐさま先生に言いつけてアカデミー側の大きい権力で何とかしてもらおう、とかいう色々と駄目な考えしか持てない。
・・・・ま、前世でその作戦失敗してから今ここにいるんですけどね・・・。

「いのは・・・その、サクラって子・・・・可哀想って思う・・・?」
「んー・・・・まぁ、思うけど。やっぱりいじめられる側にも原因ってのがあると思うのよー」

ドクン

「抵抗を少しもしないとか、嫌って言えないとか」

ドクン

「そういう意味じゃ、いじめられる方も悪いのかもね」




『そんなの、いじめられるあなたの方が悪いのよ』




・・・・・最悪の台詞が、
私の中で、蘇った。

「い、いの、も」
「ん?」
「いの・・・も、いじめられる方が・・・・悪い、って思う・・?サクラって子にも・・・責任、あるって・・・思うの・・?」

怖かった。
親しくなれたいのから、そんな言葉を聞くと余計に。

「まぁ、ちょっとはあると思うわよ。でもねー、そういうこと出来ない子ってのは一杯いるしねー。皆が皆私みたいに気強いってわけないしね。
だから、そういう子はいじめられないようにあたしみたいなのが助けてあげなくちゃいけないと思うの」
「え・・・?」
「だってさ、そんなの見て見ぬ振り出来ると思う!?それに、誰かをいじめて笑ってる奴なんてサイテーよ!!
あいつら一回ギャフンと言わせなくちゃ、このいのちゃんの名がすたるわー!」

悪い胸騒ぎが、
すーっと引いていくのが分かった。
まるで、風邪を引いた時に飲むお薬みたいに身体の中にいのの言葉が染みていって。
ああ、やっぱり。
君は最高のお友達だよ、いの。

「・・・いの・・・あのね、その、サクラって子。おでこが広いのからかわれてて・・・いじめられてるんだって」
「なるほど・・・くっだんないことで悩んだりいじめたりしてんのねー。でも何でロクがそんなこと」
「さ、さっき!毒草分けた時・・・・その・・・少し、話したんだよ・・・」

それは当然ウソで、私の中の知識なんだけど。

「・・・・あのね・・・明日、サクラに会いに行ってみよう・・・。いのの言葉聞いたら、サクラも勇気出ると思うし・・・」

サクラ、待ってて。
君を変えてくれる子を、連れて行くよ。
例えいつか、ライバルという関係になっても・・・絶対に切れたりしない絆を、
君に届けに行くよ。

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