青空の下で | ナノ

(ああ、やはり無駄足だったか)

うちはと化け狐の餓鬼に挟まれて歩いている娘の姿を見つめる視線が一つ。
男は、影の中に溶け込むような術を使っていた。

(何故、アレが宗家なのだ)
(何故、私が分家で燻っているんだ)
(何故、女如きが・・)

あの方の娘なのだ。
歯軋りをしたくなる衝動を抑えて、娘が一人になるのを待った。
自分が屋敷から出て、人里に下りて、ここまでする義理など無い、
あるのはただ強い劣等感と憎しみと、悔しさだけ・・それがこみ上げてくる。
全てはあの、幼すぎる娘のせいなのだ。

(私と奴が、逆であったならば)
(汚らわしい母親と共に一族を追い出せたものを)

尊敬していた師を、
一族のしきたりを、
あの女達は奪い、破る存在でしかない。

どうしてあの方は私を認めてくれないのだろうか、
下賤な女共に比べれば、次期頭主に向いているのは私だと自負しているのに。
あの方はこちらを向いてくれない、
それどころか、いつだって愛情を向けるのは女如き。

あの方がいない今の内が、接触を許される時間。
勿論、これがあの方の耳に入れば相当の処分に値するだろう・・・だが、もう自分は我慢出来ない。

(全ては、奈良一族の為)

あなたなら、最後は絶対にわかって下さると、
私は信じております。



どろり、
夕焼けの中、その男はまた影に沈んだ。

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