青空の下で | ナノ

「もしかしたら、あなたが跡継ぎになるかもしれないしね、
知っておいてほしいことは今のうちに知ってもらいたいって気持ちもあるのよ」

ああ、
私が思っていたよりこの家系は歴史が長く、厳しいものがあるんだな、
のんびりしすぎな自分を呪った・・。

「奈良家の頭主の血を濃く受け継いだ以上、あなたにも未来のことを考えてもらわないとね・・
すごく早すぎる話だってことはわかってるけど、あなたは今それが理解できる程頭がいいもの・・流石、あの人の子よね」

そう言って、ヨシノさんは少しずつ話始めた。
奈良一族に生まれた女の運命を、
跡継ぎ娘として、
そして・・・誰かをこの屋敷に婿入りさせる日のことまでも。

「・・・かなり、重い話になってごめんね。でも、たった一つ言いたいことがあるの」



後悔しないように生きなさい



ヨシノさんのその言葉が、私の心に刻み込まれる。

「奈良一族はね、決して途絶えてはならない一族なの。私はここへ嫁いだ身だから
内部事情なんてここに来るまで分からなかったけど、あなたは違う。
初めから奈良一族の娘として、女性として生まれてきた立場だから・・後々、結婚も強制されることになってくるでしょうね・・」
「・・・そう、なんだ・・・」

結婚。
驚く反面、ずいぶんぶっ飛んだ話になったな・・・と怖くなる自分もまたそこにいた。
まだまだ年端のいかない子供にするような話ではないが、
私はその話の重要性もすごく理解出来るし、何より目先の出来事だけに集中している現在の自分の行動を思い知らされた気がする。

「だからね、私あの人に言ってやったのよ!ロクが好きになった男の子なら、文句言わずに絶対ここに婿入りさせなさいよね、って!」
「へ?」
「昔はね、それこそ何代も前に女性がこの家に生まれた時は許婚を早い段階で決められてたみたいなの。
でも、そんなの許せなくない?好きでもない男と結婚するだなんてそんなホラーなことないわよ。
これだけは認めさせてやったわ!女の生涯をそんな簡単に決められてなるもんかってね!」

さ・・・・流石、ヨシノさん・・・。
恐妻の称号は伊達じゃないことが今はっきりわかりました・・!

「・・確かにね、こういう問題はすごく大事になるし、困ることでもある。
でも、愛する人がいればどんなことにも立ち向かっていけるものなの・・これだけは、あなたにはまだ分からないでしょうけどね」

そういうヨシノさんの頬が少し赤らんだのを私は見逃さなかった。

「あなたは女でもあり忍でもある・・・けどね、この一族に生まれた運命でも、女の幸せは絶対に掴みとってほしいの。
誰かを好きになれるようなことが、その時が来たら遠慮しないでね。私たちはいつでも受け入れられるから」

約束よ、とヨシノさんが小指を出した。
私は戸惑いからか照れからかくる動揺をおさえながらも、うんと答えて指切りをした。

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