目の前の景色に、
私の心は不謹慎にもはしゃいでしまいました。
人が、こんなにも大勢、
見たことのない色んな露店、

「・・・で、この貸本屋はよく俺が顔出してる方」
「は・・・はい!」
「まあ、毎日通う必要はねぇけどな・・どうせ任務で忙しくなったら自然に来なくなる。
お前が本好きなら覚えといても損はねえぜ」
「・・・!はい、読書は、その・・・好きです!その・・とても!」
「そっか、なら暇つぶしには最適だな」

どきん、
その笑顔にまたも私めの心臓はうるさくなるのです。

「んじゃ、一通り基本的な場所は回り終えたから・・・次は、俺の人間関係を覚えてもらう。
里外に関しての地図や資料も奈良の屋敷にあるから全部頭に叩き込めよ。
その日が来たら、お前は分家のもんじゃなくて俺自身・・
宗家のもんになるんだから、どんな特権でも使い放題だ。役立ててくれよ」

じゃあ、会いに行くか。

「・・・・へ?」
「まあ、直接ってわけじゃねえけど、俺の交流がある同期の連中くらい名前と顔は一致させてほしいしな」

ふわりとまた浮遊感。
嗚呼・・・!
私はこの一日だけで何度天へと果てればよいのでしょうか・・!
意識している場合などではないのに・・!

ぱちりと目をつむり、
邪な意識を弾き飛ばすように、若様に掴まる手の力を強めてしまいました。






>



- ナノ -