こんなに、
こんなに近くで若様を、
若様が木々の間を風のように走りぬけるそのお姿にも頬を赤らめて
そんなはしたない欲望に負けそうな自分をおさえこんで、
すとん、と若様が舞い降りた場所を見て、
私めはきょとんと、周りを見回すのみでした。
「ここ・・・は・・・」
初めて見る、場所でした。
綺麗な日差しがその風景を美しく魅せ、
そこを通る賑やかに振る舞う人々達。
「何だ、お前里には降りたことないのか?」
そっ、とおろして下さった若様に動揺を見せないようにと
すぐ視線をそらしながら言いました。
「は・・・はい・・恥ずかしながら、あまり里には出たことが・・」
「そうか、余計手間かかるな」
でも、お前はこれから外の世界で"俺"として生きてもらわなきゃならねえ。
「ついてこいよ、先に案内してやる。
地図だけ見て把握するよか地形全部実際に見た方が早い。
"俺"の行動パターンなんかも再現してもらうくらい徹底してくれなきゃ困る」
「はっ・・・はい!」
冷静に、
冷静に、
任務と私情をはさむでない、かのこ。
頭を一生懸命に切り替えて、私は若様の後をついていきました。
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