「あっ、あのっ」
まるで、風を切って飛んでいるような心地でした。
手をひかれるままに、若様に身をゆだねて。
嗚呼、
これだけでも天に昇ってしまいそうな程の歓喜だというのに。
「何だ?まあ聞きたいことだらけだとは思うがな」
「い・・行く、とはどこへ・・ですか・・!」
「言ったろ、お前にはこれから"俺"を覚えてもらわなきゃならねぇってな」
こんなに近くで若様を目にしたのははじめてで、
言葉も何も、もう出てきはしません。
ただ必死でついていくことしかできないのです。
「ああ、もうめんどいな、少し我慢してくれ」
ふわり
身体が浮かぶ感覚に一瞬動揺して、
若様のお手の熱を感じて余計に混乱は広がるばかり。
私めは、若様の腕に、抱かれていたのです。
「きゃっ・・・」
「飛ばしていくからな、つかまってろ」
心臓の音がひどくうるさくなるのを隠しきれずに、
震える私はただくらくらとするしかありませんでした。
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