「・・・・だから少しは気付いてあげてほしいなって。あなたに恋してる人、きっとすっごーく傍にいるよ」
何とか妄想のようなことは起こっていないらしい・・・。
三人は今星宿の寝室前で壁にびったりと張り付ききっちりと盗み聞きをしていた・・・。
「何で俺がこんなこと・・・、」
「しっ!!鬼宿静かに!!聞こえないじゃないの!!」
「おめーも大声出すな柳宿!」
びたっともう一度耳を壁に貼り付ける。
・・・・どうやら柳宿の話をしているらしい。
「・・・・そなたは?誰か好きな男がおるのか?」
「あ・・・あたしは・・・」
(好きな男だとぉ・・・)
"ちょっとセコかったけどかっこいい男の子だった。もう一度会いたいなぁ。"
いつか見た美朱の日記。
それを思い出し紅蓮は鬼宿を睨みつける。
「てめー・・・」
「なっ、何だよその目!!怖いからやめてくれっての!!」
「あっ、あたしはいーから!ねっ、おすすめした子がいるんだけど・・・。」
裏でそうこうしている間にも向こうの話は進んで・・・。
「・・・私はいるよ。・・・ずっと昔からたった一人あこがれ続けた娘が・・・・」
声が小さくなり、少し聞き取りづらくなった。
だが妙にハッキリと・・・聞こえた部分は・・・。
「私はただお前のことが知りたい・・・・何もかも」
・・・・・・・・・・・・・
しーん、と無音が響く。
(?おっかしぃなー、何も聞こえねぇ・・・)
ピシッ・・・・
その時、目の前の壁にヒビ・・・というか切れ目が入った。
「え?」
バラバラ・・・・
壁が壊れたその先には・・・・。
「た、鬼宿、柳宿・・・・・お兄ちゃんまで!」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「「「あ、よいよいよいよいっ♪」」」
「・・何をしておるのだそち達は!踊るんじゃないっ!!」
星宿の手には剣・・・・おそらくそれでこの壁を切ったのだろう。
「美朱を迎えに来ただけだっつーの!」
「・・・そち達は特別に私の部屋への出入りを許しているが、こういう時は気を利かすのが道理ではないか?」
鬼宿はつんとした態度で「そうですね」と黙ってしまったが・・・紅蓮は違った。
「・・・気ぃ利かすわけにはいかねぇなぁ。言ったろ、美朱に手ぇ出したらただじゃおかねーって。
お前後宮に妃候補いるんだろ?そっちに行けよ、美朱に手出すな」
バチッ・・・・と星宿と紅蓮の間で火花が散った。
「どっちにしろ俺らは朱雀召喚したら向こうの世界に帰るんだ。つまりお前とは結ばれねぇ、諦めろ。
それに・・・お前にはもっとふさわしい相手がいるよ。お前を想って・・・お前だけのために頑張ってる柳宿の気持ち・・・・ちったぁ考えてやれ」
「・・・紅蓮・・・・・」
「ほれ、美朱寝るぞ。夜更かしは体に悪いからな」
「えっ?お兄ちゃん、ちょっと・・・!」
紅蓮はそう言って美朱の手をとり・・・・無理やり連れ出した。
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