「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

しーん、とした空気が二人の間に流れていた。
柳宿の部屋・・・気まずい空気に紅蓮は耐え切れず、口を開いた。

「・・・・柳宿、さ。お前・・・星宿のこと嫌いなのか?」
「・・どうしてそんなことを?」
「いや、だって・・・」

仮にも星宿の妃候補であるはずなのに。
先程の対面したあの様子・・・どう見ても、好いているという態度ではなかった。
好きでもないんなら、どうして後宮にいるんだ?と・・・紅蓮は気になったことを全て問いかけた。

「好きに決まっていますわ。でなければ後宮になどいません」
「なら、どうして・・・」
「・・・・星宿様は、朱雀の巫女に夢中なのです。幼い頃からずっと想い続けていた存在ですもの、会えて嬉しいのは分かりますわ。
けれど・・・そのお陰で私達後宮の女には一度も近付いたことなんて・・・」

やきもち、か。
柳宿にも女らしい一面があったんだなと関心する。

「後宮のことをどう思っているのか・・・紅蓮様で試させて頂きましたの・・・ごめんなさい」
「・・・へ!?どゆこと!?」
「・・どんな反応をするか、見てみたかった・・・あの人にしたいこと、言いたいこと全てあなたにぶつけて・・。
でも、それでも・・・星宿様は気にも留めてくれなかった!!
私・・・ようやく分かったんですわ。あの方は私達のことなんてどうでもいいんだ、って・・・・」
「だから・・・・」

だから、あんなことを。
俺に抱きついてキスしたのも、四六時中ずっと側においてたのも・・・全部あいつと重ねてたんだ・・。

「私・・・・あの子が憎いの」

柳宿が言った台詞には・・・冷たさが混じっていた。

「・・・にく、い・・・?」
「気に入らないの、あの子の何もかも」
「そんな・・・美朱はただお前と仲良くなりてぇんだ、それくらい分かんねぇのか!」

ガッ!!

ふいに強い力で腕を掴まれギョッとする。

「紅蓮様も・・・・あの子のところへ行ってしまうの?」
「んなっ・・・!?」
「うざったいのよ、あの子!陛下もあなたも独り占めして!!私など後宮に入って一年近く陛下は見向きもして下さらなかったのに!!」

怒りと共に声が大きくなった。

「あの子は突然出てきてちやほやされて!陛下も陛下よ、あんなちっぽけな異界の娘の何がいーの!!
だから仕返しにあなたを盗ってやろうって・・・」
「柳宿・・・・」

彼女は今にも泣きそうな顔をしていた。
何を言ったらいいか、分からない。



「・・・なんだ、あんた陛下が・・・星宿が好きだったの・・・」



美朱の声が聞こえた。

「ごめんね。聞くつもり無かったんだけど・・・ここの近く歩いてたら聞こえちゃって・・・」

その後ろには鬼宿の姿も見えた。
多分・・・柳宿に文句でも言いに来ようとしたのだろう。
気まずい雰囲気に飲まれ、頭をかいていた。

「あたしにヤキモチやいてたのね!大丈夫、あたし星宿とは何でもないから!」
「・・・ほ・・・ほれ!聞いたか、何でもねーってよ!」

ばんばんと柳宿の背中を叩く。
紅蓮本人も、美朱が星宿を気にしてないその態度にかなりほっとした。

「あたし協力したしたげよーか?星宿にそれとなく言って来たげる」
「そういうことなら俺達も手伝うぜ、なぁ鬼宿?」
「・・・まぁ、事情が事情だけにな・・・・」

三人の優しい言動に、柳宿は顔を隠した。
・・・・涙が流れているのを見せたくなかったから・・・・。

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