どたたたたた・・・・!!
足音を大きくたて・・・紅蓮は走っていた・・・と言うより逃げていた。
ちら、と後ろを振り向く。
「お待ちになって〜、どうして逃げるの紅蓮様〜」
「うるせーっ!いい加減ついてくんな柳宿ーーっ!!」
皆の眼前でキスされてからというもの・・・・紅蓮は柳宿に付き纏われていたのだ。
「だっ・・・・誰か・・・っ!」
誰か助けてくれーーーーっ!!
―第5話 不敵な片思い―
「うおおっ、美朱ぁ〜〜〜っ!!」
何とも弱弱しい声で自室の扉を開けた。
「キャーーッ!!ちょっと、こんな時に入って来ないでよっ!!」
「うわーーっ!!違うっ、俺はただかくまってほしくてっ・・!!」
そこには着替え中だったらしい、下着姿の美朱がいた・・すぐに紅蓮は視線を逸らす。
「俺は何も見てない俺は何も見てない・・・」
しゅるるっ!!
「でぇっ!?」
ぴんっ、とはった布が紅蓮の両足を捕らえる。
ぱたりと顔面から倒れこんだ。
「おほほほほっ、逃がしませんわっ」
「ぐ・・・てめぇ〜〜〜っ!!」
「美朱さんごめんあそばせ!この人ったらもー恥ずかしがっちゃって。さっ行きましょ紅蓮様」
「嫌じゃーーっ!!放せ、放してくれーーっ!!俺は美朱と一緒がいいーーーっ!!」
ズルズルと引きずられていく紅蓮。
あんな風に女性から扱われる兄の姿を見るのはとても珍しい・・・。
美朱は止めることすら忘れてただぽかーんと見ていた・・・。
「・・・おー、えらい引きずり回されてたなー、紅蓮の奴・・・」
「た、鬼宿・・・・」
その日紅蓮は自室に戻れる事無く・・・一晩中柳宿と共に過ごした・・・。
その間、鬼宿と美朱の二人っきりの時間がゆっくりと流れていたことに・・・・気付けるはずもない・・。
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