「二人とも無事だったか!」
無事瓦礫の中から助け出された二人。
「先生!俺無事じゃありませぇん・・・」
へろん、と元気無く紅蓮が手を上げる。
その目は焦点があってないように見える・・・。
同時にその頭からだらだら流れる血に星宿他家臣はぎょっとした。
「わーーーっ!!これ、すぐに包帯を持って来んか!!」
「はっ、はいーーっ!!」
「ちょっと!!本当に大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫。打ち所が悪かっただけだ。」
「大丈夫じゃないじゃんっ!!」
家臣達に手当てされている紅蓮の姿を見てはらはらする。
「守ってくれるのは嬉しいわよ!!でも死んじゃったらどうすんのよ!!」
「別に?お前のために死ねるんなら俺は本望だよ」
「なっ・・・・」
「冗談に決まってんだろ。死んだらお前と一緒にいれねーし、悪いことだらけじゃねーか。んな簡単に死んでたまっか」
消毒薬がしみたのか、紅蓮は小さく悲鳴を上げ「もうちょっと優しく!!」と、半分涙目になっていた。
「言ったろ、俺はお前の守護者だって・・・・そうでなくとも、お前のことは守り通す」
『・・・お兄ちゃぁん・・・・』
・・・・・・蘇るのは、昔の記憶。
生涯かけてこの妹を守り抜くと決意した・・・あの日のこと。
「あ・・・・ありがと・・・」
美朱にそう言われ、紅蓮は笑顔で返した。
「そなたは後宮の妃の一人か?」
「あっ!まさか、さっきの力は・・・!」
星宿と鬼宿が、二人を助け出した女性を見やる。
この者、女であるにもかかわらず・・・武人以上の豪腕の持ち主で・・・。
瓦礫に閉じ込められた二人をどう助けようか困っていた時・・・・いきなり現れた。
そして次から次へと瓦礫を放り投げ・・・二人を助け今に至るというわけだ。
「私は康琳――七星名では「柳宿」と申します。」
胸元に、朱色に光る"柳"の字。
・・・・三人目の七星士!
「・・・・女の子だったのね!助けてくれてありがと!」
まさか三人目がこんなに早く見つかるとは。
美朱が握手しようと手を差し出す。
「よろしくっ!あたし夕城美朱!」
しかし女性はフン、とそっぽを向き・・・スタスタと紅蓮の方へ歩いていった。
「ん?何か用?」
「あたしが助けたかったのはこちらの方ですわ!」
そして・・・・不思議そうにしている紅蓮に・・・・。
ちゅっ
・・・・・強引に・・・・キス、をした・・・。
ビシィッ!という音が聞こえそうなほど、紅蓮は見事に石化した。
「「・・・・・紅蓮・・・・・・」」
ようやく唇を離した女性を白目剥いたまま見つめ・・・・美朱の方を見た・・・・。
何とも言えない表情をしている美朱・・・。
「ち、違うんだ美朱・・・・ご、誤解・・・」
「もう離しませんわ・・・私の運命のヒト・・・」
何、この・・・・恋愛ゲームでよく見るシチュエーションは・・・・。
ち、違うんだ美朱・・・・誤解なんだ・・・・俺はこんなふしだらな兄ちゃんじゃないから・・・・。
だから、そんな目で見るのはやめてくれぇえええええええええ!!!!
バタッ・・・・・
「どわーーっ!?紅蓮、しっかりしろーーーっ!!」
神様・・・・これは何の罰だよオイ・・・。
妹の見てる前で知らねぇ女とキスするなんて・・・・。
死ぬよりもつらいことだって、分かってんだろ・・・・。
紅蓮は涙を流しながらぶっ倒れた。
「違う・・・・違うんだ美朱・・・・誤解なんだぁ・・・・」
・・・・・何度も何度もそう口にして。
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