ズキズキと、継続的に続く頭の痛み。
寝苦しさに紅蓮はふと目を覚ます。

「よかった!!気がついた、お兄ちゃん!」


『気がついた?』


「・・・!?美朱・・・っ?」

抱きついてきたのが美朱だと、ようやく分かった。
・・一瞬、その姿があの女に重なったから・・ビックリして声が出なかったのだ。
デジャヴって・・怖い。

「・・・あれ?俺・・あの後倒れて・・・どこだ、ここ?」

紅蓮は綺麗なベッドの上で起き上がった。

「ここは、紅南国の宮殿だよ!!皇帝さんがお兄ちゃんのこと助けてくれたのよ!」
「・・・皇帝・・・?・・って、あの、行列の中にいたおエライさん?」
「うん!」

あの後。
紅蓮が倒れてから聞いた声は、この国の皇帝のものだったらしい。
兵士達を鎮め、紅蓮を手当てするように命じたのもその皇帝。
・・・だが、そうなってくるとどうも・・癪に障るのだが・・・。

「おっ、ようやく起きたのか?」

乱暴に寝室の扉を開けたのは鬼宿。

「・・・鬼太郎・・・」
「た・ま・ほ・め!!何遍言や分かるんだ馬鹿!!」
「馬鹿って言うほうが馬鹿なんだよ〜ん」
「お前なぁ・・・」

鬼宿はぶん殴りたい衝動をおさえ、こほんと咳払いをした。

「お前・・・いや、あんた・・美朱の兄貴だったんだな・・?」
「おう、そうだぞ!」

紅蓮が何故美朱を知っていて、探していたのか。
倒れた紅蓮のことを「お兄ちゃん」と呼びながら開放する美朱を見て・・鬼宿は其の理由が分かった。

「えーっと・・さっきはすまない・・いや、すんませんでした。まさか美朱の兄弟とは知んなくて・・」
「改まんなよ、何か気持ち悪い。別に、俺が美朱の兄貴だからって敬語とかいいし。今までのノリでいいぜ」
「そっか、分かった。えーっと・・何て呼べばいい?」
「紅蓮・・夕城紅蓮だ。妹が世話になったな、鬼宿」
「紅蓮・・・いい名前だな。俺は綜鬼宿・・鬼宿のまんまでいい」

がしっ、と握手をした二人。友情が芽生えたかのように見えた。
・・・が、それも所詮、「ように見えた」止まり。
紅蓮が美朱に気付かれないような小声で鬼宿に囁く。

「・・妹に手ぇ出したらぶっ殺すかんな・・・」

「鬼」の字を持つ鬼宿よりも・・その表情は禍々しく「鬼」に近かった・・・。
ギュッ・・と力がものすごい入った握手に、
鬼宿は手だけでなく心もギュッと締め付けられるような怖い気持ちになったとか。

「おっ・・起きてすぐで悪ぃんだけどさ・・二人共、すぐ来てくれないか?皇帝陛下がお呼びなんだ・・」
「皇帝が?」

急いで握手を解いた鬼宿。一緒に言われた言葉にぽかんとする。

「めんどいなぁ・・俺達、早く元の世界に帰りてぇのに」
「命の恩人なんだもん、行ってご挨拶くらいしないと悪いよ」
「そうだな、行くか」

美朱が言うとコロッと意見が変わる・・・その態度に鬼宿がコケた・・・。

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