「美朱は本気でどこ行ったんだ・・・?手がかりでもあればいいんだけどよー・・」

兵士に見つからぬよう、物陰に隠れてこそこそ喋る二人。

「知らねぇよ・・・一緒に牢屋出たと思ったらいきなり忽然と消えやがって・・」
「はぐれたのか・・あいつはもう本っ当に・・・あーあ・・」

呆れて言葉が繋がらない。俺が餓鬼だった頃にそっくりだ、元気が有り余って目ぇはなすとすぐどっか行っちまう。
きちんと行動できるよう教育したはずなんだけどなぁ・・。

「・・・・・んで?そろそろお前が誰だか、教えてくれてもいいんじゃねぇか?権兵衛さん」
「貴様に名乗る名など無い!」

実に、爽やかな笑顔で言ってやった。

「んだぁーーっ!!むかつく!!ってか何でずっと怒ってんだよ!俺何か気に障ることしたか!?」
「はぁ〜?してないっすよそんなん。気にしなくっていいと思うっす〜」
「嘘つけえっ!!めちゃくちゃ怒ってんじゃねぇか!!何だその態度!!」

さっきから一向に鬼宿と向き合えてない・・・。
意地っ張りというか子供っぽいというか。

「いたぞっ、こっちだ!!」
「げっ!!お前が大声出すからだぞ!?」
「うっせぇ、お前のせいだ!!」

今のやり取りが兵士に聞こえてしまったらしい・・・まばらだった兵士が一気に集まる。
取り囲まれるのも時間の問題だった。

「・・・ったく、しょうがねぇな!!」

鬼宿が正面の兵士を蹴り飛ばす。その額には、赤く浮いている「鬼」の文字。

「てめぇは下がってな!怪我するぞ!」
「はっ・・誰にモノ言ってんだ!!」

鬼宿の言葉と同時に、今度は紅蓮が手を出す。
殴られた兵士がぶっ倒れた。

「へぇ・・・なかなかやるじゃねぇか」
「お前もな!」

いつの間にか背中合わせになって戦っていた。
・・今ので強さを感じ取り、背中を預けても大丈夫だとお互いが思ったのだ。

「ちっ・・キリがねぇな」
「一匹いたら三十匹ってか?ふざけんなよゴキ兵士共があああ!!」

居場所がバレたらそこに兵士が集まるわけで。
しかも殴ったくらいではまた起き上がってくる・・せめて武器とか・・・何か、力があれば・・!



『死ね』



一瞬、あの鎧の男が脳裏に浮かんだ。
・・・気にくわなかったが、あいつは強い。
あいつのような不思議な力があれば楽なのに。

「鬼宿!!」

その時、騒ぎを見たのか・・・茂みから、誰かが飛び出して来た。

「「美朱!!」」

美朱も紅蓮のことにようやく気付いたようだ。

「お兄・・・」

その姿を、兵士が捕らえた・・・。

「!!美朱!!」

ガッ!

「ぐっ・・・・!」

油断した。
後頭部を強く殴打され・・紅蓮は倒れる。

「さ・・わんな・・・!!」

だが、意識を失うことは無かった。
捕らえようとする兵士の手を振り払って立ち上がる。



「美朱から・・離れろぉっ!!」



バッ・・、と紅蓮の体が、赤い光を放つ・・・。

「うわぁっ!!」
「何だ!?」

兵士達がその光に触れ・・・次々と跳ね飛ばされた。

「こやつ・・・妖の術を・・!」
(・・・何だ・・・?俺、この力は・・・)
「・・・・・っ」

流石に、疲れ果てた。
ふらふらと・・紅蓮は倒れこむ。

「お兄ちゃんっ!!」

視界が、段々暗くなっていく。
気を失う前に聞いたのは、美朱の声と。



「静まれ!私の命令無しにその三人に手を出すことは許さぬ!」



誰かの声を最後に、意識を手放した。

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