「・・・ん?何だ?」
美朱がいそうな食べ物関係の店は全て回った・・・そこにもいなかったので今度はどこを探そうかと迷っていたところ。
急に周りの様子が騒がしくなった。よく見ると、奥の方にすごい数の人が集まっている。
「こりゃ何の騒ぎだい?」
「皇室の行列だよ、この「紅南国」皇帝の!」
「はぁ〜・・・おエライさんか!」
どハデな行列・・・その中心のどハデな乗り物。おそらくそこに皇帝が入っているのだろう。
美朱とは関係なさそうだ。
そう思って踵を返そうとしたその時。
「ねぇ、あなた皇帝さんでしょ!」
何のためらいも無く、皇帝の乗り物に駆け寄る少女が見えた。
(み・・・美朱っ!?)
間違いなく、妹の姿をそこに見た。
「・・・・そなたは?」
乗り物の中から声が聞こえる・・・もしかして、本物の皇帝・・・・?
「実はお願いがあって!その冠の装飾二つほど下さい!」
妹があまりにも破天荒なことをし出したので、また会えたという喜びよりも驚愕の方が勝った。
(な・・・何やってんだあいつはぁ!!)
「恩人さんにお礼しなくちゃいけないんです!いいでしょ!!ちょっと止まってよ!」
皇帝らしき人の腕をぐいぐいと引っ張る我が妹。
・・・・教科書で、大名行列ってものがあったけど・・・その邪魔をした者はだいたいが・・・。
(・・・・切捨て御免!!)
「み・・・美朱っ!!」
冗談じゃない!!大事な妹殺されてたまるかっ!!
紅蓮は大声で呼びかけたが、直後視界を覆った煙に声はかき消えた。
「うわぁ、何だ!?」
「げほっ、げお・・・・くそ、煙玉か!!」
兵士達が咳込んでいる。
その煙から遠ざかるように移動する人々とは逆に、紅蓮は美朱の方へと向かう。
「ぅだーーーっ!!くそ、邪魔だっ!!」
ギャラリーの数が多すぎて思うように前へ進めない・・・だが、煙の中に美朱と・・誰か一人いることが分かった。
しゅた、と飛び降りて美朱を抱き上げる男・・・その額には「鬼」の字があった。
・・・あいつか・・・人の妹たぶらかしたのは・・・!!
「おい!!おいっ!!そこのお前っ!!美朱を・・・」
カッ!!
「んなっ・・・!!?」
赤い光。
四神天地書に入る時に見たあの光・・・。
美朱自身が今、赤い光に包まれている。
「え・・・っ!?お、俺も・・・っ!?」
それに共鳴するように、紅蓮の体も光りだした。体が、消えていく・・・。
ここに来た時と同じ・・・一瞬、目の前の光景に図書館がかぶった。
・・・・元の世界に、戻っている・・・?
(こんな・・・中途半端なので帰れるかよ!)
赤い光は辺りを包み、閃光が視界を覆う。
・・・・・。
光が、徐々に収まっていく。
そこに紅蓮と美朱はまだ立っていた。
(・・・残れた・・・のか・・?)
ほっとするのも束の間。
「・・・その娘と若者を捕らえよ」
「なっ・・・!!」
兵士が、鬼の青年と美朱を取り囲んで剣を向ける。
美朱の光に紛れてしまったせいか、誰も紅蓮の存在には気付いてないらしい。
「ちょ、待て・・・!!」
「化け物だあーーーっ!!!」
「どわぁーっ!!?」
ドドドドドドドド・・・・!!
美朱の光に驚いた人々が、あらぬ勘違いをしてこちらに向かって大移動して来た。
人の波にさーっと紅蓮が流されていく。
「美朱・・・・美朱ーーーっ!!」
見えたのは、兵士達に連れていかれる妹。
紅蓮の声に気付いたのだろうか?一瞬こちらを見たが、兵士に促されその視線はまた逆の方向に。
畜生!!
待ってろ美朱!!
必ず助けに行くからなぁーーーっ!!
かくして、思っても見ない形で再会を果たす羽目になった・・・。
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