短い道を抜け、少し広い場所に出た。

「おっしゃビンゴ!!俺、ナイス勘!!」

あの人攫いが結構近くの距離に見えたので指をパチンと鳴らす。
男はこっちに向かって歩いて来ていた・・・紅蓮は見えないように壁に身を潜め、その様子を伺った。

「・・・・っ、どこ見てやがる!!」

と、その時。男が誰かともめるような声が聞こえてきた。

(げ・・・!?何じゃありゃ!?)

男の目の前にいたのは、RPGのような鎧を着込んだ男。
人攫いといい、妙な鎧といい・・・本当に何なんだここは!?

(・・・!?)

鎧の男がその腰にさしていた何かを・・・
あれは、剣のようだ・・・・それをスラッと抜いた。
それに反射した光が紅蓮の目に入る。
・・・・信じられないが、真剣のようだ。
男が剣を、人攫いの男に向けて・・・振り下ろした・・。


「ぎゃあああ・・・・!!」


「・・・っ!」

ボタボタと・・・・地面に血を流して倒れる男。
その断末魔の悲鳴が耳を劈く。

(お、おい・・・ウソだろ・・・?)

時代劇・・・じゃない。
冗談だろ?
あいつ・・・・人を殺して・・・・。




ヤバイ。




心臓が高鳴った。
やばい、やばいやばいやばい。
何で、何があって・・・?あいつ、死んでんじゃん!!
血の赤色が、地面にしみこんでいる。目を背けたいのに・・・あまりにも衝撃的で、その光景は瞳に焼きついた。
鎧の男が、気絶している唯を抱き上げる。

「!!ま、待てっ!!」

唯が危ない。
そう思い、大声を上げて駆け寄った。

「・・・何だ貴様は?」

怖い。

(人殺しが相手の喧嘩なんてしたことねえぞ・・!!)

でも・・こいつに唯ちゃんを殺させるわけには・・!

「お、俺はその子の友達だ!!返せ!!この殺人犯!!いや、殺人狂!!」
「ふん・・・・とんだ誤解をするな。私はこの娘を助けただけだ」
「・・・え、そうなの?」

どう殴りつけてやろうかと、戦闘態勢に入っていた身体から力が抜ける。

「な、なーんだ!悪い、誤解した!ありがとな!・・でもよ、何も殺さなくたって・・」

紅蓮が死体に目を向ける・・・瞬間。

ビュッ!

「のわっ!?」

何と、男が今度は紅蓮に向けて剣を突いてきたのだ。

「いっ、いきなり何すんだっ!」

すんでのところでかわした紅蓮・・・後ろに退き距離をとる。
鎧の男は無言で剣を構えた。
先端には、先程の血がついたまま・・・。

「この娘を連れ戻されては困るのでな・・・貴様にはここで消えてもらおう」
「は!?」

剣が、また向かってくる。
・・・・・マジデスカ?

「どわっ!!」

ビッ・・・・と頬に剣がかする。一筋の血が流れた。
こいつ・・・・本気で俺を殺す気だ!!

「・・っきしょう・・!きたねぇぞ、丸腰相手に剣なんざ!!男なら素手で勝負しやがれ!!」
「素手、か・・・」

男はくすっと不気味に微笑んで剣を地面に放り投げる。

「これでいいのか?」



ドンッ!!



「・・・!ぐあっ!!」

その掌がかざされる・・・・途端、紅蓮の体は何かに突き飛ばされたかのように吹っ飛んだ。

(な、何だ今の・・・!?)

何か、一瞬手の周りが光ったみたいだけど・・・・。

「き、きたねぇぞ!!今度は変な手品使いやがって・・・!」
「手品かどうか、見てみるがいい。まぁ・・・・貴様に確かめられる暇など無いがな」

鎧の男が空に手を伸ばす。何をするつもりだと、目を凝らしてみると・・・。

「あ・・・・あんた、どこの超人さん・・・?」

顔が引きつった。
男の掌が青く光り・・・・その光が手の中で球状になっていく。



「死ね」



視界が真っ青に覆われていく。
わぁ〜・・・・・どっかの漫画みた〜い・・・って言ってる場合かぁーーーーーっっ!!
俺死ぬの!?
死んじゃうわけ!?ねぇ!!



(いくら夢でも・・・これはねぇだろーーーっ!!)



紅蓮の姿は、一瞬のうちに消えた・・・。
いたはずの場所・・・その地面はひどく焼け焦げていて。

「・・・・・・・」

始末した。
鎧の男は唯を抱き上げ、姿を消した。



「あ・・・・危なかったのだぁ・・・・」



気を失った紅蓮を背負い、逃げていく僧の存在に気付かずに・・・。

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