「・・・カンクロウ」

ぼそ、とその男の人がアタシの頭を撫でながらつぶやく。
・・・冷たい人かと思ったら、意外にもその手のひらはあたたかくて心地良い。

「長男が生まれたら、この名をつけようと思っていた・・・」
「あなた・・・!」

男の人と女の人の間に挟まれて、アタシは抱かれた。
ねえ、何でそんな悲しそうな顔ばかりするのさ。
生まれたばかりの赤ちゃんに見せたらいけないよそんな顔。

「女子ばかりだと、示しがつかんのは事実だしな・・・この子は、これよりカンクロウ・・長男だ。
里の者にもそう流せばよい・・・だが、人目にはつかない場所で保護をしろ。
いいか、これはお前が言い出したことだが、カルラ・・・私も大嘘を貫き通そう・・」

ごめんね、とまた小さくアタシに言う女の人。

「ごめんね・・・私が、男の子に産んであげられたら・・・こんなことには・・・」
「・・・過ぎたことを悔いても仕方あるまい・・・次の男児に、期待しているぞ」
「・・・はい・・・・」

こんなことってどんなこと。
アタシ、何だってこんなところにいるんだろう。

(夢なら覚めてくれ)

そう、夢・・・"なら"。
くらっと視界が回る・・・なんだか気持ちが悪い。
目を閉じてみるとすぐ真っ暗になった。
どうせ目が覚めたら病院のベッドに決まってる・・・夢を見てるってことはアタシは、まだ生きているんだ。
死んでないんだ、だから・・・。


「カルマ」
「あなたはカンクロウであり、カルマでもある」
「これから先、辛いこと苦しいことを背負わせてしまう母さんを許して・・」
「あなたらしく生きて・・・生き残って・・・」


女の人の声が、いつまでも頭に響いていた・・・。


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