「よめん」

この世界について学ぶ機会が早くもやってきて。
巻物を開く手は少し緊張していたが・・その直後の俺の第一声にエビゾウ爺は呆れ果てた。

「だからお前にはまだ文字は早すぎると言ったじゃろ・・」
「だってー」

達筆すぎんだよこの巻物全部・・!
幸い、元いた世界に似た文字がところどころに入っていたからまだ安心は出来たが。
筆で書かれた文字はかなり形を崩されていて、書いた本人くらいにしか分からないような状態だ。

「まあ姉ちゃんに頼まれた以上仕方ないかあ。世話役押し付けたお前の父ちゃんにお金せびってやる」
「じじーあくどい・・・」
「冗談じゃよ冗談」

そう笑う顔はチヨ婆にどこか似ていた。

「・・あ、じじー。ちょっとさきにおしえてほしいことがあるじゃん」

今の会話で思い出した。
かなり気になってること。

「おれのとうちゃんって、なにしてるひとなの?」

偉い人なんだろうなと言うのはなんとなく分かっていたが。
この世界以前に俺は家族のことすら知らない、
疑問が浮かぶのは当然だろう。

「ふむ・・それを言うにはまずこの国のことを一から説明せねばならんのう」

長くなりそうだなと思いながら、エビゾウ爺の言葉をゆっくり聞いた。

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