まさかまさかまさか。
何故なんだ、
戦場に近い状態になったこの場所で、
突破口となったのは、彼女だなんて。
誰が信じられるのであろうか。
「はっ!!」
いつもの体術ではなく、
一本の白銀の刀を、まるで体の一部のように操り、
この事態を切り開いていく姿は、見慣れた彼女ではなかった。
「人質とるなんて面倒くせーことしてんじゃないよ馬鹿共が!!」
ガッ
まるで、流星のように視界を一瞬横切ったものがさらにもうひとつ。
視線を奪われたのは、言うまでもない。
「・・・・やぁー、ヒナタ、ごめん、おくれた」
「・・遅いよ、ロクちゃん!」
「これでも、前の任務とっとと片付けてきた方なんだよ」
紅を盾にしていた輩が、転がっている。
真新しい中忍ベストを羽織り、この場に飛び降りたもうひとつの異の事態。
別任務により今回隊を外れていた影を操る少女は、
血を帯びた漆黒の刀を手に、紅をその手に抱きかかえていた。
「アスマ先生」
彼女は、いつも通りの口調で、担当の先生の名を呼ぶ。
ひゅんっとその手から投げられたものは小さな袋。
「それ、奈良家の瞬間治療薬と、兵糧丸です。どうせチャクラ足りないだろうとおもってもって来ました」
「私達のこと聞きたいでしょうけど、今は目をつぶってください」
「数分なら、私達程度でももちますんで。その間回復出来ますよね?」
ちゃき、
二人がかまえた黒白の刀がぎらりと光を反射する。
「聞き捨てならない台詞が聞こえた気がするけどヒナタ」
「うんそうだね、ナルトくんをさらうんだって」
「なるほど許せないねえ」
「「くたばれ下郎」」
ぎぃん、とお互いに合図のように刀を鳴らし合わせ、
自分達が知らない姿の彼女達は、突如として戦いの場に舞い降りた。
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