地雷の疑問
それはある小さな疑問からだった。
「次元の帽子ってさ、実はハゲ隠しなんじゃね?」
晴れた午後、ルパンはソファーに寝転がって手を後頭部で組みながらふと溢した。
するとダイニングチェアで斬鉄剣の手入れをしていた五右ェ門が「?」とルパンの方を見た。
「何を言う。前にあの帽子が無ければ銃が使えないと申していたではないか。」
「そん時はそうだったけっどもな、今は実はハゲちゃってて隠してたりー?みたいなよ。」
「下らぬ。あれだけ髭に囲まれているというのに、何故頭上のみ毛が無いというのだ。」
「ザビエルだってそうだろ?」
「……。」
五右ェ門はザビエルの肖像画を思い出しながら首を捻る。
「まぁ…確かに。」
「だろ?怪しいなー♪」
顎に手を添え、どこか楽しそうにルパンは眉間にシワを寄せた。
不二子は初めは興味無く聞き流していたが、すぐ目の前でそんな話をするため嫌でも終始会話が耳に入ってくる。
「そんなに気になるなら確かめてみたら?」
不二子がルパンの方を見てそう促すと、ルパンは体を起こして両手を上げた。
「俺が?冗談キツいぜ不二子ー。俺が聞けば…。」
『なぁ次元、ちょっと帽子外してみてくれ。』
『はぁ?何で。』
『次元がハ…いやいや、ちょっとした興味よ。』
『下らねぇ。いやだ。』
『ちょっとでいいからさー。』
『いやだっつってんだろ。』
『じゃあ俺が取る!』
『しつけぇぞ!風穴あけられてぇのか!』
「…といった感じになる。」
「そう……。」
ルパンは悔しそうにまた寝転ぶ。
さほど気になることもなかったので、その会話はそこで終わってしまった。
─夕方─
ルパンは変装マスクを作るために別室に隠り、五右ェ門は修行に出てしまった。
つまり今リビングには不二子と次元の2人だけ。
ダイニングテーブルで次元は相変わらず銃を磨いており、不二子はその前でいつか次元が買ってきた雑誌を読んでいた。
「そんなに磨いてよく飽きないわね。」
不二子が雑誌から視線を外し次元に声をかけると、次元は帽子の下から不二子を見た。
「銃ってのはな、日々のメンテナンスでいざという時の生死を決めんだよ。」
次元はそう言うとまた磨き始めた。
不二子は「ふーん」と聞き流したが、その時に昼間の会話を思い出した。
今ここにいるのは2人のみ。
聞くならまさに今だ。
「次元。」
「ん?」
「その帽子、ちょっと見せてくれない?」
無理ならそれでいい。ただのこの瞬間のみの興味なのだから。
すると次元は「これか?」と被っているハットを指差した。
不二子が頷くと、少し間を置いて帽子に手を乗せる。
次元の黒く固い髪が帽子に当たって微かに揺れた。
「ほらよ。」
帽子を外した次元は不二子にハットを渡す。
不二子はそれを受け取ろうとしたが、その少し前に次元の首から上が視界に入り、出ていかなかった。
頭はもちろん髪がある。
だがそれよりも驚いたのは次元がオールバックであったということだった。
普段は帽子の影に隠れて見えない切れ長の目も姿を現し、しかと不二子を見ていた。
ワックスで固めたのか、普段からしているために型がついたのか前髪は全て後ろに流されている。
不二子はその次元に見とれて帽子を受け取ることを忘れていた。
「……どうした?」
次元が眉を動かすと、不二子は我に還り、慌てて帽子を受け取った。
「あっうん!ありがと!」
「?おう。…なんか変か?」
「な、何が?」
次元は目を泳がせている不二子を心配そうに見る。
「いや、急に帽子貸せとか言うからよ。」
「え、と…前にこの帽子の鍔で標的を定めてるって言ってたじゃない?だからどんな感じかなーって…。」
「なんだ、そんなことかよ。」
次元はガタッと立ち上がり、マグナムをダイニングテーブルに置くと、不二子に歩みよった。
「被ってみるか?」
「え?いいの?」
「そこまでケチじゃねぇよ。」
ハハ、と目を細めて次元が笑うと不二子の鼓動は高鳴った。
強く優しい瞳が見えるだけで不二子は異様に緊張していた。
「こっちが前だ。そうだな…、じゃああのカレンダーの1日に合わせてみるか。」
同じ目線になるために次元は不二子に顔を近付ける。
不二子は息を飲んだ。
(ち…近い!!)
「じ…次元っ!も…いいからっ。」
「あ?まだ何もやってねぇだろが。」
「十分わかったから!じゃないともう…。」
「?」
「変になりそう…っ。」
不二子が顔を真っ赤にしてうつ向くと、次元はよくわからず頭を掻く。
その時に自分が帽子を被っていないことに改めて気付き、次元は悪戯が思い付いた子どものように口角をゆっくりと上げた。
-fin-
◯1500hitのキリ番小説です!
「帽子を外した次元とそれに
キュンとくる不二子」でしたが
如何でしょうか?
オールバックを強調してほしい
とのことなので
強調させて頂きました!
私自身も次元のオールバックは
すごく好きなので…(*^^*)
この後次元は魔と化します←
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