memo
12.5.25 日々あれこれ

恋文の日(5/23)

「何を書いてるんですの?」

昼間から黙々と机に向かうルークに声をかけた。どうやら日記ではなさそうだ。

「手紙」
「あら素敵ですわ!どなたに宛てて?」
「…秘密」
「まあ、意地悪な事をおっしゃいますのね」

むくれたナタリアは隙を見てルークの手元から手紙を取り上げた。

「あっ、馬鹿返せ!」
「…これは…」

ルークが慌てて手紙を奪い返す前にざっと内容に目を通したナタリアは読んでしまった事を少し後悔した。ルークにしては丁寧に並べられた文字が集まって手紙のあちこちで沢山の愛の言葉を囁いている。一行に一回と言っても過言では無い。誰に宛ててなんて聞かなくてもわかった。

「……直接おっしゃればいいじゃないですか」
「たまには手紙でも悪くねぇだろ。いくら好きだって言ってもあいつ時々不安がるからさ、こうやって形にしてやろうと思ったんだ」

まあ手紙を書いても無駄かもしれないけどなとルークは笑う。だが先程の続きを書こうと机に向かえばその表情は真剣な物に変わる。そんなルークを横目で見ながらナタリアはひそかに微笑んだ。

(無駄なんかじゃありませんわ)

きっとこれを貰った彼は驚くに違いない。でも内容を読み進めるうちに照れながらも大事にその手紙をしまい、ルークの願いどおり不安な時や何かある度に何度も読み返すのだろう。その愛を確かめるために。この手紙にはそれぐらいルークの気持ちが溢れださんばかりに詰まっていた。

「…ルーク、私にも一枚便箋を頂けますか?」

なんだか自分も無性に愛しい人へ愛を伝えたくなった。


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