「○○です、宜しくお願いします」

パチパチと大きな拍手が教室に広がった。歓迎してくれる雰囲気は嬉しいが、早くこの場から立ち去りたい。注目されるのはどうも苦手だ。

「じゃあ、席はそこね」
「はい…」

少しざわつく教室を緊張しながら歩き、言われた席に座れば、となりの男の子が話しかけてきた。

「よろしくな!」

うわー、すげぇ良い奴じゃん。不安でいっぱいだった気持ちがすーっと無くなってきた。感動し過ぎて噛んでしまったが、よろしくと返せば、彼が太陽のように笑う。可愛いっ!

「俺は九十九遊馬ってんだ」
「遊馬かあ、すっごい可愛いね」
「そ、そうか?」
「うん」
「俺は○○の方が可愛いと思うけどなー」

ぐああああっ!!!
熱い熱い!顔がヤバいくらい熱いんですけどっ!
遊馬から急いで視線を逸らし、熱くなっている顔を手で覆う。ぐにゃぐにゃと身体を動かし悶絶に耐えていると、肩をとんとんと叩かれた。誰だよ、とニヤケる顔をそのままに後ろを振り向いたら、見覚えのある顔がそこにはあった。

「げっ、気持ち悪ィ顔」
「あ、アリトじゃん」
「お前、やっぱり俺に気付いてなかったのか」
「クラス全員の視線が私に集まってたんだよ?顔なんてあげれないです」

私とアリトが親しげに話をしているのを、ぽかんとした表情で見ている遊馬に理由を説明する。納得した彼は、大変だな、アリトの兄ちゃんたちと一緒に住むなんて、と哀れみの眼差しを向けてきた。
え、やっぱりそうなの?

130531



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