deliverance 2 通信を終え、静かに無線機を置いた。冷たく薄暗い司令室が、再び静寂に包まれる。司令室に残る数名の精鋭達は、誰もかれも思いつめたような顔でただ立ち尽くす。その暗い視線を背中に受けて、副司令―和平はゆっくりと振り返った。 「お前等、そんな辛気臭い顔するんじゃない。まるで葬式みたいじゃないか」 「しかし、副司令―」 「いいか、何度も言うが、ボスを救うにはこれが一番確かな作戦なんだ。今俺達のボスは、敵の基地のど真ん中にいる。直接助けに行ってる暇はない。この基地を使った陽動が、一番手っ取り早い」 「なら副司令は退避して下さい!ここには俺が残ります!」 「だめだ。誰か一人がここに残って、敵兵の動きの報告を受け、適切な指示を出し続ける必要がある。適任は俺だろう。お前等は俺の指示で、敵兵を引きつけろ」 押し黙ってしまった兵士達の、誰もみな納得などしていない顔をしている。俺も少しは下から慕われるような副司令になれたのか。状況が状況でなければ大いに喜びを味わう事もできただろうに。 もともとここを守るために残していた兵士達だ。ここを捨てるのならばその戦力もボスのために役立てる事ができる。 怖くないと言ったら嘘になる。ここに乗り込んできた敵に、有無を言わさず撃ち殺される可能性だってないわけじゃない。生きていたとして尋問は確実だろう。まぁそれも、ボスが助けに来てくれるまでの辛抱だ。 震える指先を固く握りしめて。せめてこいつらの前くらいでは精一杯の虚勢を張ろうじゃないか。 「いいかお前等、これが最後の命令なんて事にはしないから心配するな。お前等はお前等のやるべきことをやれ。今この状況で、ボスを助けられるのはお前達だけだ!頼んだぞ。」 「はっ!副司令!!」 「よし、行ってこい!!」 敬礼を降ろした兵士達は、戦場へと走って行く。俺の戦場はここだ。 無線機をとり、任務開始当初から外に配置していた兵士へ連絡を入れる。おそらく敵兵はもうすぐにでもここにたどり着くだろう。その敵兵達と今でていった兵士達がはち合わせないようにしなければならない。 新たな報告が入る度、地図と照らし合わせ適切な位置に、適切なルートで兵士を動かしていく。一人ではさばききれないほどの情報、連絡を処理しつつ、ここを抑えられた後の事も考えながら指示を送った。 ここからの指示に比べ、サポートの質は落ちるだろうがマザーベースの指令室も交代の準備は出来ている。 やるだけのことはやった。 「…よし、その場で一時待機。そのまま次の指示を待て。オーバー」 全ての兵士にとりあえずは指示し終え、無線機を切った。 と、ほぼ同時に司令室の扉が乱暴に破られる。 騒がしい足音とともに、わらわらとなだれ込んでくる敵兵士達。 (あとは頼むぞ、ボス) 観念したように手を挙げたその腹に鋭い一撃を喰らって、和平はどさりと床に崩れた。 |