ちっぽけな幸せが最高

▽大学生設定

高校卒業後、俺は桜乃との約束通り東京の大学へと進学した。
東京に進学した一番の理由は、いつでも会いたいときに会える距離にいたいから。大阪と東京ではあまりにも離れすぎている為に会いたいときに会えずに今までは桜乃に辛い思いをさせてしまっていた。だから、今度はそんな思いをさせたくはない。桜乃には笑顔でいてほしいから。
あのいつもの優しい笑顔を俺に向けて欲しい。

***

東京に引っ越す日はあえて言わなかった。突然会いにって驚かせようと思っていたから。久々に会う桜乃の家の前で少しばかり緊張しながらインターフォンを鳴らす。パタパタと小走りで玄関に向かってくる足音を聞き、俺の心臓がドクドクと早さを増していった。
ガチャリと音がしてゆっくりと開くドア。ドアの隙間から覗き込むようにして桜乃が顔を出した。

「財前、さん…?」

まだ状況が全然理解できていないのか俺の名前を呟いたきり口を閉じてしまう。驚きの表情はそのままに瞳には透明な雫がたまっていく。

「桜乃、元気そうで安心したわ」
「財前さんも、元気そうで安心しました。…あの。とても会いたかったです」

涙を零すまいと必死にこらえながらそう口にする桜乃がたまらなく愛おしい。
ああ、桜乃だ。目の前に桜乃がいる。ずっと会いたくても会えなかった恋人。腕にそっと触れてそのまま自分の方に抱き寄せた。その瞬間大好きな桜乃の香りが俺の鼻をくすぐる。今たしかに桜乃は俺の腕の中にいる。その事実が思わず涙が出そうになるぐらい嬉しくて。幸せで。

「…俺も会いたかった。ずっとずっとこの日を待ってたんや」

愛しい恋人を自分の腕の中に閉じ込める、何度も想像してはその度に桜乃が恋しくなった。けど今はそれが想像ではなくて現実のものとなった。桜乃の温もり、香り、全て俺の腕の中にある。これ以上の幸せなんてほかにない。

桜乃が傍にいる今この瞬間が、俺にとっての幸せっすわ。


ちっぽけな幸せが最高
(他の人からすれば大したことじゃないのかもしれない)
(でも、俺達にとっては最高の幸せ)

−−−−−−
復活感謝企画。莉亜さんリクエスト。
リクエストありがとうございました。


BACKNEXT





×
- ナノ -