出会わなければよかったと

▽無双OROCHI2:馬超×王異
(王異視点)


あいつが憎くてたまらない。いつか一族の仇をとってやる、そう決めていた。けれど、あいつをいざ目の前にしたら、武器を持っている手は震えてきて、どうしようもなく怖くなった。情けないと思いながらも、私は武器を持つ手に力をいれることはできない。ああ、どうして。いまさら何に怯えている?私はこいつを殺すためだけに生きてきたはずなのに。自分からチャンスを逃そうとしている。駄目、今逃げたらもう絶対にこんな絶好の機会は巡ってこない。ころせ、殺せ、西涼の死神を。

***

「馬超…私はお前を許さない」
「…ああ、一生許さなくても構わん」

涼しい顔してそう一言だけ小さく呟く。そのつぶやきさえ私を苛立たせる。西涼の死神、馬超。この男はどこまで私の気を狂わせるのか。憎くて憎くて、頭がどうにかなりそうだ。だが、殺したいほど憎んでいるのに、それでも私は殺すことを躊躇っている。どうして、なぜ。
私に一瞬だけ、隙ができたのを馬超は見逃さなかった。

「…半端な覚悟で俺が斬れるとでも思ったか?」
「、っあ」
「甘く見るな」

鋭くて、獰猛な瞳に、私は一瞬思考が停止した。いつか見たときと同じ瞳、気迫。
そのとき感じたのは恐怖、ただそれだけ。そして気づけば馬超の槍の切っ先が私の咽喉スレスレに突きつけられていた。ほんの一瞬の出来事だった。

「…さっさと殺せばいい」
「殺さん。俺にはお前を殺す理由がない」

いっそ一突きに殺してくれれば楽だったのに。中途半端に私を生かそうとする馬超、今はただその優しさに苛立った。私は、殺してほしかったのよ、西涼の死神。私はお前が嫌いだ。大嫌いだ。馬超。


出会わなければよかったと
(そう願わずにはいられない―……)

title by Aコース
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復讐から始まったふたりの関係が少しずつ違うものに変わっていくのが素敵。某さんが書かれた馬王とても素敵でした憧れです。


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