冷たくしては優しくして振り回す

▽ハル視点


「ニヤニヤして気持ち悪いよ、ハル」
「ひ、ひどいです!ハルは雲雀さんとの思い出を思い返してただけなのに!」
「それが気持ち悪いって言ってるんだけど?」

そう吐き捨てるように言う雲雀さんをハルは睨んでみるけど、雲雀さんはちっとも謝る様子を見せてくれない。むうと頬を膨らませてそっぽを向いてみる、でも雲雀さんは相変わらず何かの書類に目を通していてハルの方をちっとも見てくれない。本当に意地悪な人。少しくらいこっちを見てくれれば、ハルの機嫌は一瞬で直るというのに。

「…ハル帰ります」
「そう」

ハルが帰ろうとしても引き止めてくれないなんて、冷たい。でも、お仕事中に訪ねたハルも悪いかな、なんて思ったりもする。帰ると言ったからには帰らないといけないですよね。

「…お仕事中ごめんなさい」
「ハル、忘れ物」

ないですよ、と言おうとしたハルの唇を雲雀さんはそっと塞いできた。キスされたと気づいたときにはもう唇は離れていて、けど唇にはまだほんの少しぬくもりが残っていた。

「ひ、雲雀さん!」
「帰り、転ばないようにね」

そう一言だけ口にした雲雀さんはまた指定の席に着き書類に目を通し始めた。
雲雀さんはいつもそうだ。冷たくされたと思ったら、こうしてまた優しく触れてきて、ハルのことを振り回す。優しいキスは甘くて、とても甘くて、一度されたらまたして欲しいと思ってしまうほど。

(なんてズルイ人だろう…)

けど、とても素敵な人。ハルはこれから先もずっと雲雀さんの傍にいたい。ずっと、ずっと―…。


冷たくしては優しくして振り回す

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だいぶ遅れたハル&雲雀さんお誕生日おめでとう小説。


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