私の心臓をどうするつもり?

▽大学生で同棲中/千代視点


阿部君はとても寝起きが悪い。朝どんなに大声で起こそうとしても、全然起きない。ん、とかう、とかそういう鈍い反応しかない。だから私は起こすのを諦めてご飯を作るためにと立ち上がろうとした。けれど突然腕を引っ張られて、私は阿部君のベッドに思い切りダイブした形になった。わっと色気のない声を出した私に阿部君は布団の中でクッと笑う。いつから起きてたんだろう。

「しのーかあったけえ」
「朝だよ阿部君」
「知ってる。つか休日くらいのんびり過ごしてぇんだけど」

確かに休日くらいは私だってのんびり過ごしたい。でもいつまでのんびりしているわけにはいかない。朝ごはんを用意したり、洗濯物を干したり、色々やることは残っているのだから。それに一番の問題は、阿部君と一緒の布団で過ごすということ。流石に恥ずかしい。阿部君の体温をこれほど近くに感じて、冷静でいられるわけがない。

「…しのーか好き」
「なあに突然」
「別に。言ってみただけ」
「なにそれー」

甘えたように言われて、可愛いなあなんて思った私は思わずぽんぽんと頭を撫でてしまった。そしたら阿部君も仕返し、と私の頭を髪がくしゃくしゃになるほど撫でてきた。もう、折角整えたのに。少し拗ねて言ってみる。

「髪がくしゃくしゃでもしのーかはかわいい」

そしたらさらっとそんなことを言うから驚いた。阿部君は私をドキドキさせる天才だと思う。だって毎日今みたいにドキドキするようなことを言うんだから。

「阿部君のばか」

これ以上ドキドキさせないで。心臓が止まったらどうするの!


私の心臓をどうするつもり?
(大好きな彼に振り回される、そんな毎日が幸せ)


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