あなたもわたしもばかよ

▽TIGER & BUNNY:虎徹×カリーナ
(カリーナ視点)


初めての恋の相手が既婚者のおじさんなんて笑っちゃうわ。

私が恋したのは既婚者で、かなり年上で、しかも子持ち。自分で自分に呆れるわ。結ばれるはずなんて絶対ありえない相手を好きになるなんてね。幸せになりたいなら、他に男捜せばいいのに、それができないでいる。あんなおじさんより素敵な人はたくさんいるっていうのに。でも、それでも、私はおじさんがいい。どこを好きになったのかも分からないけど、おじさんがいいの。おじさんじゃなくちゃダメなの。

***

「おいおい、お前何一人で笑ってるんだ?」
「う、うるさいわねおじさん。乙女の恋煩いを邪魔しないで!」

あ、何言ってんの私。恋煩いとか、自分で言ってどうすんのよ。ああもう顔が熱い!おじさんのせいなんだから。バレたかな…でもおじさんすごい鈍感だし大丈夫、よね。うん。一人で納得した私はおじさんの方を見てみた。おじさんはすごく驚いたような顔をしている。もしかして、バレちゃった?やだ、何か胸がドキドキする。心臓がうるさい。

「お前にもそんな相手がいたんだなあ。安心した」
「は、あ?」
「お前もそういう年頃だしなあ。でもまああんまわがまま言うなよ?男に逃げられちまうぞ」

ハハハと笑ってそう言った。ふざけないでよ。ときめきを返して。信じられないこのおじさん。乙女の純情を踏みにじるなんて!ばか!私がおじさんに対してどれくらい本気なのか知らないで。私がたくさん悩んで傷ついて悲しんで。今までどれだけおじさんを思ってきたのかも知らないくせに!

「さいってい!大嫌い!!」
「いきなり何だ?!」
「自分で考えなさいよ!もう知らないんだから!」

やっぱり分からない。何でこんなおじさんを好きなのか。あーあ、自分のばか。
どんなに鈍感でも馬鹿でも、それでも私は鏑木・T・虎徹という人物を愛していて。もうこの人以上に愛せる男の人なんていない。それを私は知っている。正真正銘のばかみたいね、私。


あなたもわたしもばかよ
(彼の心にはまだ奥さんがいて、それを分かってても愛しているの)


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