▽リコ視点

私だけじゃない。伊月君だって、ほかの女の子から告白されることなんてよくあるくせに。

たまたま見られてしまった告白の現場。伊月君は恐怖を感じるほどの笑顔を浮かべて私にこう言った。部室で待ってるよ、と。正直言えば、そんな言葉無視したかった。従いたくなんてなかった。でも、無視すれば何されるか分からない。最近の伊月君はどこか憂鬱そうに見え、時折見せる表情は狂気じみていたから。

***

静かすぎる部室の扉を恐る恐る開ければにっこりと微笑む伊月君と目があった。思わず後ずさりそうになると、伊月君は思い切り私の腕を引っ張り部室へと連れ込んだ。バランスを崩してつまずきかける私の体をしっかりと抱きとめたのはもちろん伊月君。ゆっくりと顔を上げれば笑って首を傾げる伊月君が見えた。

「あり、がとう…もう大丈夫だから離し、っ」

そっと伊月君の胸を押し退けようとすれば、伊月君は私の背中に腕を回して再び抱きしめられた。あまりの強さに思わず声が漏れる。けどそんなこと伊月君は気にもとめず、背中に回していた手で今度は耳に触れてきた。
ゆるゆると這いつくような手の動きにぞわぞわとする。動きが止まったかと思えば耳たぶを掴まれ横に引っ張られる。

「い、た…っ」
「…ふっ」

結構な強さで引っ張られ痛みを感じる。思わず目を瞑った瞬間、生暖かい息が耳をかすめた。
恐る恐る目を開けば私の耳元に伊月君の唇があった。予想通り伊月君の吐息が私の耳元をかすめたらしい。やめてと口にする前に再び伊月君の唇が息を吸い込んだ気配を感じ、再び耳をかすめるだろう吐息に私は目を瞑った。
だけど、耳を襲ったのは吐息なんかじゃなくて。

べろりと、生暖かくて湿ったものが私の耳を舐めた。

想像もしていなかった。舌で耳を舐め上げられるなんて。しかもその上、耳たぶを甘噛みされた。片耳だけがジンジンと熱を帯びていて、何だか気持ち悪い。無意識に眉間にしわを寄せた私に伊月君は声を出して笑う。…どうして、笑っているの?

「何を、考えているの…?」
「何だと思う?」
「……」
「ははっ…そういう怯えた表情もかわいい」

伊月君は楽しそうにそう口にした。そして舌なめずりをした後、彼は今日一番の狂気じみた笑顔を浮かべて口にした。

「めちゃくちゃにしたいんだよ、カントクのこと」


嗚呼、貴方はいなくなったのね
(あの頃の貴方が好きだった)
(無邪気にバスケをしていた頃の貴方が)
(大好き、だった)

title by 累卵

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『猫×猫』の宮本真緒ちゃんへ。
お誕生日おめでとう!!大好きでっすヾ(*´∀`*)ノ


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