一日の練習が終わり、部員たちが帰り支度を始めた頃、黄瀬はリコの下を訪れた。にこにこといつもと変わらぬ笑みを浮かべて、体育館の扉を開けて入ってきた。体育館で戸締りの確認をしていたリコがゆっくり振り向くと、黄瀬は走って近づいてきた。そしてリコさんこんばんはっス、と言って抱きついてきた。リコは特に反応もせず、こんばんはと言うと黄瀬の腕の中からするりとすり抜けた。そしてちらりと黄瀬を見て少し冷たく聞いてみる。
「こんな時間にどうしたのかしら黄瀬君」
「もちろんリコさんに会いに来たんスよ!」
満面の笑みでそう答えた黄瀬にリコも思わず微笑んだ。彼には人を笑顔にさせるような力があるようだった。端整な顔立ちをしている彼は笑顔も綺麗で、リコは思わず見つめてしまう。黄瀬はリコに笑って言った。
「そんなに見つめられると照れるっスよリコさん?」
彼は意地悪な笑みを浮かべながら首を傾げリコの名前を呼んだ。リコはぐっと言葉につまり、黄瀬から目を逸らした。横顔からでも分かるほど頬を赤くするリコは可愛くて、黄瀬はバレないように小さく笑った。
「少し遅いけど、今からお茶でもどうっスか?」
「…ええ、行きましょうか。折角誘ってくれたんだもの」
リコは少し考えた後、笑って答えた。
午後のお茶はいかが?
title by 待ってて神さま
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