▽勝呂視点

どこまでも俺たちは意見が合わない。今俺の目の前にいる女は俺を思い切り睨み付け、威嚇行為に近いものをしている。まるで猫や。それを言えばまた機嫌を損ねるのは分かっとるから、黙ることにした。

「もう嫌。何でこんなにあんたとは合わないわけ?」
「そんなん俺が知るわけないやろ」
「…そう言うと思った」

だったら最初から聞くな、と言い返してやりたかったがそんな気分にもなれずに、ただ「あぁ、そうやな」とだけ返した。その答え方のどこが気に入らなかったのか俺は右頬に軽いパンチを食らった。神木のパンチは結構強く、ジンジンと頬が痛む。そっと頬を抑えて、神木を見れば神木は何故か涙を流していた。どうして、

「…何で泣いてるんや」
「そんなの知らないわよ…」
「何やそれ」

よく分からない。本人も泣いてる理由が分からないんや。俺に分かるはずがない。神木はただ涙を流すだけで、何も言わない。悲しいのか、と聞けば違うと。どこか痛いのか、と聞けばそうでもないと言う。一体なんで涙を流しているのかまったく分からない。俺はどうすることもできずに、ただ黙っていた。すると神木が涙をこぼしたまま呟いた。

「…少しだけ、背中貸してよ」

か細く消え入りそうな呟きに、俺は小さく頷いた。


難しい年頃なんです
(少しのことで泣きたくなる)


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