その日は天気が良かった。空は綺麗な青空で、雲ひとつない。そんな日の昼休みに、燐としえみは涼しい木の下で燐が作ったお弁当を食べていた。夏休みに行われた合宿で作ったカレーを食べてから、しえみは燐の料理の虜になっていた。しえみの嬉しそうな顔を見れるから、燐も以前より料理をするのが楽しくなっていたのだ。

「本当に燐上手だよね!特にね、玉子焼きがふわっふわでおいしいの!」

玉子焼きを口に含み、嬉しそうにそう言ったしえみに思わず燐も頬が緩む。好きな子のために料理を作る、ということがこんなにも楽しいこととは思わなかった。燐は毎日メニューを考える時間が幸せだった。『何を作ればしえみはもっと喜んでくれるだろうかいつもそればかりを考えて、そして一人で笑っていた。それを見た雪男に何度も「気持ち悪いよ兄さん」と言われたが、全く燐の耳にはその声は届いていなかった。

「燐?」
「あ、ああ、どうしたしえみ」

少しの間ボーッとしていたらしく、しえみは不思議そうに燐の顔を覗き込んだ。燐はその近さにも驚きつつ、返事をする。すると、しえみは「燐は食べないの?」と首をかしげて聞いてきた。燐は、少し恥ずかしそうに視線を逸らして「箸忘れた」とぶっきら棒に答えた。

「え、お箸ないの?」
「ん。しえみのは入れたんだけど、自分の忘れたみたいだ」
「じゃあ、はい。燐、アーン」

燐の言葉にしえみは申し訳なさそうな表情をした後、燐の口元にお弁当に入っていたから揚げを近づけた。しえみからの「アーン」に、燐は一瞬で頬を染めた。耳まで真っ赤になっている。予想外の展開に、どうしていいか分からない燐。それと同時に今を逃したらもう二度とこんなチャンスめぐってこないかも、と思う。燐は深呼吸をして、思い切ってそれを食べた。

「…ふふっ」
「な、なに笑ってんだよ」
「あのね、なんだか恋人同士みたいだ、な…って…!」

そう言ってからしえみは、タコのように頬を赤く染めた。先ほどの燐よりも真っ赤に。自分の言った言葉の恥ずかしさに、言ってから気づいたらしかった。燐はそんなしえみを見て、ぶはっと吹き出した。

「しえみ、おもしれえ」
「そ、そんなに笑わないでよ!燐の意地悪!」


恋人同士みたいだね


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