▽棗視点


絵麻が行きたいと言えば、どこにでも連れて行ってやりたいと思う。彼女の笑顔が見れるなら、何でもしてやろうとも。
どんな小さな出来事でもあまりにも嬉しそうに笑うから、俺まで笑顔になる。感情表現が豊かな彼女はいつも俺を楽しませてくれ、色んなことを教えてくれた。


「好きってそんな簡単に言っては駄目です」
「俺は好きだから好きだと言っただけだ」
「もう…恥ずかしいですからそれ以上はいいです…っ」

唯、恥ずかしがっていただけの絵麻は顔を隠して俯いてしまう。初々しい反応に思わず頬が緩んで、細い肩をそっと抱き寄せれば驚いたように体をビクつかせるがすぐに俺の胸にすり寄ってきた。かわいいな…。たまらく愛おしい、そう思った。初めての感情だった。


またあるときはキスだけでかなりガチガチに緊張していた。

「い、いきなりはやめてくださいね?」

そう言った絵麻は何度か深呼吸を繰り返した。一瞬のうちに終わるキスでこんなに緊張するなんて初々しいな、かわいいなと思った。いじわるして噛みつくように唇を合わせれば絵麻は瞳に涙をたくさんためてひどいです、と口にした。
初めてのキスでもないのに中々慣れることのない絵麻、そういう純情なところを俺は好きになった。いまどき珍しいくらいに純情な絵麻だから―…。


隣で寝ている絵麻に俺は優しく口づける。くすぐったそうにふふと緩む口元にもう一度唇を近づけ、そのまま絵麻の呼吸を奪ってやった。愛しい彼女と俺の吐息がからまって、しばらくの間俺は絵麻の唇に酔いしれた。


彼女の呼吸を奪って息をする
(もう離れることはできない)


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