前のお話


「トキヤさん、本当にこの格好で…?」
「えぇ、私は嘘はつきません」

一ノ瀬が星がつくほどの笑顔でうなずくが、春歌にはその笑顔は見えない。なぜなら目隠しをされているからだ。春歌はこのとき初めてお仕置きの本当の意味を知った。普通に抱いてはお仕置きにならない、そう思って一ノ瀬は春歌に目隠しをした。

真っ暗な何もない世界。急に春歌は怖くなった。世界に一人だけ取り残されたような孤独感。怖い、その感情のみだった。気づいたらトキヤさん、と名前を呼んでいた。

「どうしました?」
「どこ、ですか…っ。私を、私を置いて行かないで、くださっ…」
「春歌!私はここにいます、置いて行ったりなんかはしません」

震える春歌の手を握ると震えは収まった。落ち着いた様子の春歌の目隠しをとると突然抱きついた。ぎゅっと強く抱きつく春歌はまだ少し震えていた。一ノ瀬は優しく抱きしめ返した。

「大丈夫ですか…?」
「トキヤさんが見えなくなった途端、すごく不安で…。怖くなったんです」
「怖い、ですか?」
「…はい」

今にも泣きそうな表情の春歌をもう一度抱きしめて一ノ瀬は耳元で謝る。「怖がらせてすみません」切なそうに言う一ノ瀬に春歌は首を横にふって、彼の頬に唇をつけた。驚く一ノ瀬に春歌は微笑む。

「私、抱かれるならトキヤさんの顔を見ながら抱かれたいです。トキヤさんの顔が見えないなんて、嫌です」
「春歌?」
「抱いてくれるんですよね…トキヤさん?」

ニコリと笑う春歌。さきほどの少女とは思えないほど大胆な発言に驚きながらも一ノ瀬は笑って頷いた。


貴方を感じながら抱かれたい


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