準備万端でいきましょう続編

青葉と東がデートに慣れてきて手を繋いで歩いていると、前方から見慣れたメンバーが歩いてきた。反射的に二人は近くにあったベンチに座り、ベンチに置きっぱなしにされていた雑誌を読む振りをして顔を隠した。傍からみれば仲良しのカップル。上手いこと顔は隠れている、誰も東と青葉だと思うまい。しかし運悪く、見慣れたメンバー…コウ達は向かいのベンチに座ってしまった。

「あ、東先輩…。どうしますか?」
「…ここから逃げるぞ」
「え、でもバレませんか?下手に動かないほうが…」

今動けば顔を見られてバレるかもしれない。そうしたらこの格好も見られてしまう、それだけは絶対に嫌だった。

(こんな格好、笑われる)

「大丈夫だ。今の月島はウィッグもつけてるから遠目じゃ分からないはずだ」
「わ、分かりました」

青葉は東を信じて頷く。東と青葉は雑誌をベンチに置き、立ち上がってその場を立ち去ろうとした。幸い誰とも目が合わなかったし、こちらを向く気配もない。よかった、と安心したときだった。

「あの、雑誌忘れてますよー」
「「…」」

突然後ろから声を掛けられた二人は驚く。そして振り向くとそこには、お調子者の千田がにっこり笑顔で雑誌を持って立っていた。自分が声を掛けた人が東だったことに驚き、千田が声をあげる。相変わらずしまらない緩い笑顔を浮かべながら。

「東!」
「奇遇だな」

動揺しながらもそう言う東。ああと答える千田の視線の先には化粧をした青葉。

(き、気づかれた?)

なるべく笑顔でいようと、にこりと優しく微笑む。すると千田も笑顔返しをしてきた。東の方を向いていやらしい笑いをする千田、その顔をみて東はめんどくさそうな顔をした。

「女に興味なさそうな顔して、結構やるじゃん?」
「…」

その問いには答えたくなかったらしく、無言で千田を睨む東。その隣で、青葉はいつもの練習中のやりとりを思い出し笑ってしまった。その笑顔と可愛らしい笑い声にきゅんときたのは東だけではない。千田も中西も赤石もその場にいた者全員、その笑顔に見惚れた。しかし奇跡的に青葉とは気づく者はおらず、そのままばれずにすみそうだった。

だが、一人見抜いている者がいた。樹多村光。


「青葉、その格好どうした?」
「「…!!」」

青葉と一瞬で見抜き、そう呟く。なんでこのタイミングで出てくるんだ、そう思いながら二人はコウを睨む。彼は、近くのお店でアイスを買っていたらしい。片手には、ストロベリーとチョコミント味のアイスが入ったカップを持っていた。コウは状況が把握できていないようで、不思議そうに首を傾げる。

「つ、月島…?!」
「え、その格好?!」

当たり前のように驚く野球部。青葉をじっと見る。


(やばいですよ、東先輩)
(…3秒数えたら走るぞ)
(分かりました)

そして、いちにのさんの合図に合わせて二人は走った。勿論野球部も走り出す。二人を逃がすものかと追いかけてくる。

「しつこいですね…、東先輩」
「ああ、本当だな」

そんなことを言いながらも、二人は楽しそうだった。たまには、こんな日もいいかも。そう思ったのかもしれない。


∵たまにはこんな日も



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