その日はいつもより日が強くて、帽子でも被っていないと熱中症を引き起こしそうだった。毎日野球部で鍛えているとはいえ、女である青葉には太陽の光がきつかった。しかし、今日は東とデートの約束をしているため出かけないわけにはいかなかった。青葉はいつものように着替え、出かけようとすると一葉に呼び止められ部屋まで引き戻された。

「え、何?」
「青葉、今日東君と出かけるんでしょ?なら女の子らしい格好していきなさい。」

そう言う一葉に青葉は嫌そうな表情を向けた。

「えー?別に東先輩ってそういうの気にしないと思うしいいよ」
「駄目よ!ちゃんとした格好でいきなさい!スカートなら私の貸してあげるから」

一葉はなんとか青葉を説得して、自分の部屋から短めのスカートを出してきた。彼女は普段から長めのスカートしか穿かないのでそんなスカート持ってたんだと青葉は少し驚く。そのスカートは白で少しフリルのついたワンピース、長さは膝上2cmほど。肩はばんと露出していて着るのに抵抗があった。

「こんなの着るの?」
「大丈夫よ。上にはデニムのジャケット羽織ればいいから。あと腰には太目のベルトを巻くのよ。今年の流行りらしいから」

そう言って、ベルトとジャケットも渡す一葉。渡されたそれはまるで使った様子はなく新品のようだった。この日のために買ってあったような、そんな感じがする。

「さて、少しお化粧もしよっか。髪もちょっといじらせてね」
「え、ちょ、ちょっと?」

断る時間は与えずにもう化粧を始める一葉。瞼に柔らかい感触、頬にも唇にも…優しくふんわりと包み込むように。次いで、髪がふわりと軽くなった。軽くなったと思ったら次の瞬間、バサッと少し頭に重みを感じる。恐る恐る目を開くと、髪が長くなっていた。

「え、あ、あれ?い、一姉?」
「ん?もし誰かに会ったときに髪長ければ青葉だって気づかれないかもしれないでしょ?だから、ウィッグつけてるのよちょっと動かないで」

いつの間にかウィッグまでつけられて、鏡を覗いてみるとまるで自分じゃないようだった。おまけにカチューシャまでつけられていた。化粧と髪のセットが終わると、青葉は鞄も夏っぽさがでる編みこみのバックを持たされ靴もミュールに変わっていた。

「…行って来ます」
「はい、行ってらっしゃい」

***

「東先輩、遅れてすいません!」
「ああ、べつ、に…」

クールな東は珍しく焦った表情をした、青葉の顔を見て。動揺しているのか、視線があっちこっちに移動し手も微弱であるが震えている。

「似合いません、か?やっぱり」
「いや、そんなことない。似合っている」
「…そうですか。ありがとうございます」

お互いに緊張してしまい、ぎこちなくなる。だが少しずつ緊張もとれてきたのか1時間後には、自然と手を繋いでいた。美男美女のカップルに回りが騒いでいたのを二人は全く気づくはずも無かった。


∵準備万端でいきましょう
(うっわ、すごい美人)
(本当だ。男の人もかっこいい)



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